ピーター・ドラッカーは、企業の真の目的は「顧客の創造、維持」であると論じています。
新型コロナウイルスの影響で先行きが見えない市場環境の中、この言葉は色あせるどころか、むしろ今だからこそ組織運営のあり方として受け止め実践すべし、と多くのリーダーは決意を新たにされているのではないでしょうか。
しかし、その決意に沿って実践している営業組織、営業マネジャーはごくわずかです。
たいていの営業マネジャーが「顧客の創造、維持」を期待され、営業の果たすべき役割が大きいことを理解していながらも、実際のマネジメントで実践できないのはなぜなのでしょう。
組織の規模の大小、業界や業種の違いを超え、私が現場で見てきた「顧客の創造、維持」ができない営業組織の共通点を今回は3つご紹介します。
顧客の創造、維持ができない営業組織の3つの共通点
顧客と取引先を混同している
顧客は、サービスや商品を販売する対象であり、現場ではよく「サービスや商品が価値に変わる場所(人)」と言ったりします。
これに対し取引先は、取引の相手方を意味しますが、必ずしも「サービスや商品が価値に変わる場所(人)」とは限りません。
顧客と取引先は似て非なる言葉です。
しかし、営業現場ではこの2つの言葉が混同されることが多く、取組みを誤った方向に導くことが少なくありません。
例えば、コンシューマー向け商品を扱うメーカーの営業に「顧客はどこか?」と尋ねると、量販店等ならまだしも商社や問屋など、中間業者を顧客として答えることが少なくありません。
これら中間業者は本来、顧客をともに創造、維持するためのパートナーであるはずです。
しかし、顧客を見ず、目先のやり取りばかりに終始している営業は、パートナーを顧客と誤認します。
また、今度は逆に商社や問屋の営業に「顧客はどこか?」と尋ねると、メーカーなどの仕入れ先を顧客として答える、なんてことも過去ありました。
メーカーからのリベートに頼らないと利益が取れないなど、稀なケースではありますが、こうなるともう顧客がどこのだれなのか、訳が分からなくなってしまいます。
我々が提供するサービスや商品は、「どこのだれに」とって価値があるモノなのか、顧客はいったい「どこのだれ」なのか。
議論の前提となる、「顧客」という言葉の定義が正しく理解されていない状態では、創造はおろか維持、つまり足元の売上もおぼつかなくなります。
売上の理由がわからない
皆さんの部下に「この案件、なぜウチにいただけた?」と質問した場合、選ばれたわけを正しく答えることが出来ますか?
「価格が他より安かったからです」
「引き合いをいただいたからです」
冗談のようなやり取りですが、決して特殊な例ではありません。
誰もが知る大手企業の営業現場であったとしても、過去私はこのような回答に何度も遭遇しています。
今いただいている仕事ですら、選ばれた理由がわからない状態では、「顧客の維持」すら怪しくなります。
自社の強みがわからない
「お客様のニーズにあわせ、なんでも対応できます」
良く聞くフレーズです。
しかし、「なんでもできる」というセールストークがお客様に残す印象は「なんだかよくわからない」となることがほとんどです。
「結局、価格ですよ!」
成績が振るわない営業との面談などでサービスや商品の良い所を突っ込んで聞いていくと、このように逆ギレ気味に答えられることも少なくありません。
引き合い対応など、作業的に業務をこなしている営業によくみられ、自身のあつかうサービスや商品の価値に目が向かなくなってしまっています。
自社の強みが整理されていない、作業的な受け身の営業ばかりおこなっている、などの組織では、自社の強みを語ることができない営業が近年とても増えています。
営業の重要な役割とは
営業は「顧客の創造、維持」の最前線を担う役割があります。
先行きが見えない今だからこそ、少し立ち止まって組織の状態を見極めることも必要なのではないでしょうか。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 取締役副社長 桑原 賢一
- 1999年 同志社大学卒。大手化粧品メーカーにて、経営指導から現場販売員の指導育成に携わり、延べ100名以上のトップセールスの育成実績をもつ。アタックス参画後は、上場企業の営業戦略構築、小規模企業の営業組織に対しての直接指導、営業職の個別指導等にあたっている。コンサルティング支援における行動変革率は100%を誇る。
- 桑原賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。