独立行政法人企業基盤整備機構が実施している「中小企業景況調査(令和4年3月30日)」にて、1~3月期の全産業の業況判断DIが▲26.6(前期差3.3ポイント減)となり、2期ぶりに低下したことが公表されました。
新型コロナウイルス禍の長期化に加え、ロシアによるウクライナ侵攻が原油価格や原材料価格の高騰を招き、4月期以降の更なる影響は避けられない状況です。
経営と営業の間で起こるズレ
営業に対しても、売上以上に利益を重視した取組みを求めることが増えたのではないでしょうか。
経営層の皆さんからすれば、これまでのように売りが立てば何でもOK、という営業にありがちな発想を改め、利益も念頭に「質の高い売上」に転換して欲しい、という当たり前の認識で営業にお話されていると思います。
しかし、この当たり前の認識、本当に営業と共有されているでしょうか。
業界業種、規模の大小を問わず、様々な現場で営業を見ていると、当たり前の認識、つまり前提となる考え方が、経営と営業の間でズレていることが数多くあります。
「質の高い売上」への転換に向けた留意点
今回は「質の高い売上」を求める際に気を付けたい、経営と営業の間で起きやすい考え方のズレをご紹介します。
「やる、やらない」で考えず、「ある・ない」で考えている
経営からすれば、「質の高い売上」など当然目の前に転がっているはずもなく、現在の無駄を見直し、新たな可能性に向け積極的に行動し、果敢にチャレンジすることを営業に求めているのではないでしょうか。
「質の高い売上」のためには、「これまでの何をやめ、新たに何をやるのか」、つまり「やる・やらない」で考えることが必要です。
ところが営業、特に引き合い対応を主に行ってきた人は、「質の高い売上」をこれまでのお客様、これまでの商材で考えます。
「質の高い売上」をつくろうにも「これまで自分はあるものは形にしてきた。そのような客先も商材もない」と、つまり「ある・ない」で考えています。
「さき・どこ(どの)」で考えず、「いま・ここ(これ)」で考えている
「やる・やらない」で考えはじめれば、そこから思考が具体化します。
求められる利益を、いつまでに出さなければいけないのか。
そのためには、どのような顧客に、どのような商材を売れば良いのか。
すなわち、「いつまでに、可能性のある顧客をつかみ、何で売りを立てるのか」、つまり「さき・どこ(どの)」で考えるようになります。
ところが、「ある・ない」で考え「ない」と判断する人の多くが、時間的な奥行きも客先や商材の拡がりも持たず、目の前の状況だけを取り上げて断定する傾向にあります。つまり、「いま・ここ(これ)」のみで考えています。
経営はこの難局を乗り切るために、まだ見ぬ可能性について話をしているにもかかわらず、営業はいま目の前の状況を繰り返し説明しており話は平行線のまま。
このように文章にすると冗談のような話ですが、実際の営業現場では業界業種、規模の大小関係なく、よく目にする光景です。
そしてやっかいなことに、このような考え方のズレは、資料やツール(月額料金が何万円もする営業管理システムであったとしても)で見える化されることはありません。
営業との考え方のズレを正しく把握し、組織一丸となって「質の高い売上」を構築することを目指したいですね。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 取締役副社長 桑原 賢一
- 1999年 同志社大学卒。大手化粧品メーカーにて、経営指導から現場販売員の指導育成に携わり、延べ100名以上のトップセールスの育成実績をもつ。アタックス参画後は、上場企業の営業戦略構築、小規模企業の営業組織に対しての直接指導、営業職の個別指導等にあたっている。コンサルティング支援における行動変革率は100%を誇る。
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