政府が、税金を優遇する「中小企業の基準」の見直しに入ります。
現在の基準は資本金ですが、売上や所得に基準を変更する案が出ているようです。
いまは資本金1億円以下の中小法人に税金を優遇する措置が認められています。
もともとは、体力の乏しい中小企業を守るための制度で、法人税の軽減税率や中小企業投資促進税制などの政策減税の適用が可能ですし、欠損金繰越控除の控除限度額(税金計算上の赤字を次年度以降の黒字と相殺できる額)や、法人事業税の外形標準課税などは大企業と異なる取り扱いになっています。
たとえば、欠損金繰越控除の限度額は、中小法人なら100%控除(過去の赤字を黒字の全額まで相殺)できますが、大法人なら平成27、28年度は65%、平成29年度以降は50%までしか控除できません。
資本金1億円と聞いて思い浮かぶ方もいるでしょう。
そうです、シャープの減資報道です。
この制度の恩恵を受ける目的なのか、経営危機に直面するシャープが、資本金を1億円にすると報道されましたが、批判が多く、結局は5億円への減資計画になりました。
もっとも、今回の基準の見直しはシャープ報道がきっかけではありません。
すでに他にも大きな売上規模を誇る企業が、資本金を1億円に抑えることでこの制度の恩恵を受けていることもあり、平成27年度税制改正大綱のなかで、資本金1億円以下を一律に中小法人として取り扱うことについての妥当性を見直すべきとしているのです。
さて、こうした税制改正については、今後もその動向に注目すべきですが、一方で、日頃から「税務戦略」を意識した経営を心掛け、自社を再点検することも大切です。単に知らなかったというだけで大きな税務メリットを逃してしまうケースがあるからです。
先日たまたま相談いただいた企業の例です。
年間2,000万円もの研究開発費用をかけているにもかかわらず、試験研究にかかる税額控除(支払う税金から一定額を差し引ける制度)が何も検討されておらず、よくよく確認すると、200万円を超える税額控除が適用できることがわかったのです。
まさにこのケースは税務に対する理解不足が原因でした。
このような事態を回避するために、税理士などのプロの力を活用し自社の税務戦略を見直すことをお勧めします。
(1)重要箇所にかかる税務処理や税務判断の内容を現状分析する
(2)税務上の解決すべき課題を掘り起こす
(3)自社にとって最適な税務戦略を立案する
(4)決定した税務戦略を実践する
税務戦略を上手に活用することはリスク・マネジメントにつながりますし、企業経営の重要な一要素であると思います。
(なお、この記事は、少しでも多くの人に読んで頂けるよう、税務の専門的な表現に対し一般的な言葉で説明を加えて書きました。)
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人
- 1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。
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