平成26年度税制改正で生産性向上設備について、即時償却を含めた特別償却と税額控除が認められることとなりました。特別償却と税額控除のどちらか一方を選択することになります。
特別償却は、その設備等の耐用年数の期間を通じて償却額の合計額は同じですが、初年度に大きく償却費を損金計上でき、その年度の法人税額が軽減されます。
税額控除は、設備等の償却額は通常と変わりませんが、別に税金を控除できるため、特別償却を選択したときより期間を通じての税額は少なくなります。
したがって、一般的には設備投資の資金を早く回収したいのであれば特別償却を選択し、トータルで資金を少しでも多く回収したいのであれば税額控除を選択することになります。
現在、この選択に影響する事柄が議論されています。
それは法人税の実効税率引き下げです。
これは欧州やアジア諸国が積極的に法人税率の引き下げを行った結果、日本の法人税率が他の国と比べて高くなり、日本企業の競争力の低下や海外への移転、または海外からの投資が抑制されることによる日本経済への悪影響を懸念し、税制調査会等で検討されているものです。
現在の実効税率35.64%を数年かけて早期に20%台まで引き下げることを検討しているようです。 法人税率の引き下げがなされた場合、同じ利益(所得)であれば引き下げ後の方が支払う税額は少なくなります。
また税率が高い期間に繰り上げて経費(損金)化できるのであれば、トータルの税額は少なくなるということです。
特別償却は耐用年数期間を通じては償却額の合計は同じですが、法人税率が高い初年度に多く償却費を計上できるので、結果として税額控除と同様にトータルの税額を少なくできる可能性があるということです。
つまり、耐用年数の長い資産ほど効果があると考えられます。 法人税の税率引き下げについて現段階では未確定である以上、特別償却と税額控除の選択は、最初に述べた基準で考えていただければ結構ですが、今後の税制の動きに注目し、会社にとって有利な方法を選択していただきたいと思います。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
- 1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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