平成28年度税制改正大綱~知っておきたい改正ポイント

税務

昨年の12月に平成28年度の税制改正大綱が提出され、現在国会で審議されています。順調にいけば、3月末には決定され4月から施行されます。この中で、企業に関係する改正を2つピックアップしてみます。

1.法人税率の引下げ

1つ目は、法人税率の引下げです。

昨年に引き続き引き下げが行われ、平成28年4月以降に開始する事業年度では、実効税率29.97%となります。

平成26年度の34.62%(平成27年度は32.11%)からすれば約5%の引下げとなります。

本年度以降も、平成30年度には29.74%への引下げが予定されています。

日本の法人税率が諸外国と比べて高い水準で、グローバルに事業を展開する企業の事業展開を不利にしていることが経済界から以前より指摘されています。

この改正は、その解消のために数年前から行われているものです。

法人税を下げれば当然税収が減少します。その財源確保として次の改正も行われます。

(1)減価償却制度の見直し
 (建物付属設備・構築物の償却方法を定額法のみとする)
(2)設備投資減税の縮小・廃止
(3)外形標準課税の拡大(赤字企業への課税強化)
(4)繰越欠損金控除制度の限度額縮小

これらの改正は赤字企業に対して広く課税を行うものであり、黒字(成長)企業へは減税、赤字企業へは増税ということとなります。

なお赤字企業への課税強化は中小企業に対しては見送られています。

2.設備投資減税の縮小・廃止

2つ目は、設備投資を促進する減税策の縮小・廃止です。

平成26年度に創設された生産性向上設備税制は現在、設備投資の全額が即時償却できますが、平成28年4月以降は50%償却になります。

そして、平成29年3月をもって廃止されることとなりました。

この税制が、ほとんどの業種・ほとんどの固定資産で適用可能であったため、使い勝手がよいとして広く活用されました。

4月以降は償却限度額が半分になり税効果は縮小しますが、適用要件が変わるわけではなく使い勝手の良さは同じです。

なお、業種・資産の種類等の範囲は狭くなりますが、中小企業者では平成29年3月まで即時償却ができる場合があります。

これは中小企業投資促進税制の該当資産(機械他)のうち、生産性向上設備と同じ要件のものであれば適用できるというものです。

また即時償却との選択ではありますが、税額控除も通常の率より多く取れます。

今回の改正は、ここ数年続いた大盤振る舞いの企業減税(投資減税・雇用関連減税)が、少しずつ影を潜める形となりました。

今後、減税措置は期限が来る都度、大幅に縮小されるか、適用できなくなる可能性が高いものと推察されます。

アタックスでは、税制改正を素早くキャッチして、皆様に使える情報に加工し、セミナーでご紹介するだけでなく個別にもご支援を行っております。是非ご活用ください。

筆者紹介

アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
愛知吉隆の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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