新聞発表によると、トヨタ自動車が凍結していた新工場設立を再開し、3つの新工場を設立するようです。
中国に2工場(広州市と天津市)、メキシコに1工場の計画です。
中堅中小企業においても、多くの企業が海外に子会社を設立し、また、かつては中国1社だったのが、タイやインドネシアにも設立するなど、日本親会社の下に複数の海外子会社がぶら下がるケースも多くなってきました。
海外子会社運営ノウハウの蓄積などにより、これまでの赤字を解消し、順調に剰余金が蓄積できている海外子会社もあるようです。
業績好調は喜ばしく、今後の海外ビジネスの更なる展開につなげることができます。
しかしながら、日本の相続税の観点から見ると、落とし穴があるので注意が必要です。
海外子会社の好調が、社長が持っている日本親会社の株価を予想外に高くしてしまうケースがあるためです。
以下、この現象についてご説明します。
一般に、相続税法上の取引相場のない株式の評価は、企業規模によって「類似業種比準価額」、「純資産価額」、両方の併用方式のうちどの方式で評価されるかが定められています。
通常では「類似業種比準価額」での評価額が、「純資産価額」のそれよりも低いため、「類似業種比準価額」が使えると、相続財産も少なくなりますので、課税される相続税も少なくなります。
しかしながら、いかなる会社規模であっても、「類似業種比準価額」が使えない会社があります。
この会社を「株式保有特定会社」といいます。
「株式保有特定会社」とは、その会社の総資産価額に占める株式等の価額の割合が50%以上の会社をいいます(いずれも相続税評価額で計算します)。
問題は、「株式特定保有会社」の場合、原則として、評価額が高い「純資産価額」が適用されてしまうことです。
日本親会社の下に海外子会社がぶら下がっている場合、日本親会社の純資産価額の算定の前に、海外子会社株式の時価を算定します。
通常は、海外子会社の株価は、時価純資産を以って時価とされます。
この時価で、日本親会社が簿価で計上している海外子会社の株価が評価替えされ、日本親会社の純資産価額が計算されます。
このとき、海外子会社が好業績で、その株式の時価が高額となり、日本親会社の総資産価額に占める割合が50%以上となると、日本親会社は「株式保有特定会社」になってしまいます。
こうなると、これまでは「類似業種比準価額」のみや、併用方法で評価できていた日本親会社の株価が、「純資産価額」で評価されることで、思わぬ高額評価になることがあります。
当然に、相続税額に影響し、万が一の時に、高額となった相続税が払えないということにもなりかねません。
グローバル経済の進展で、個人として、直接、海外不動産を購入されるケースも増えていますし、上記のように法人を通して、間接的に海外に投資されるケースも増えています。
海外が絡むと複雑になるため、思わぬ落とし穴にはまってしまうケースがあります。
これまで以上に注意を払っていただき、気になることがあれば、専門家に相談されることをお勧めします。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス 海外サポート室 室長 諸戸 和晃
- 大手住宅会社勤務を経てアタックス入社。株式公開、企業再生、M&A支援等のコンサルティング業務に従事。2011年より2年間北京赴任。赴任中は北京中央財経大学への留学、中国系会計事務所「中税咨询集团」(北京)で業務。帰国後、海外サポート室の室長として、中堅中小企業の海外進出に関する支援業務に注力している。
- 諸戸和晃の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。