本年度の減税特例で一番注目を集めている「生産性向上設備投資促進税制」の適用状況が経済産業局から公表されました。
【「産業競争力強化法」の施行から半年】経済産業省:2014年7月18日より 生産性向上設備投資促進税制の概要(別紙「3-1」~「3-4」)
この制度は、要件に該当する設備投資であれば100%の即時償却もしくは税額控除(選択)を適用できる税制です。
●先端設備(A類型)…最新モデルで生産性向上(年平均1%以上)等の設備
●改善設備(B類型)…投資利益率15%(中小企業者は5%)以上等の設備
この税制は、業種の特定がないこと、B類型では土地、車両を除くほとんどの設備(固定資産)が対象となり、非常に広く適用できることが特徴です。
今回の公表で注目すべきは、B類型の活用状況です。
(別紙3-4の「業種別確認書(B類型)発行状況(6月末時点)」)
確認書が発行された件数は828件で、業種別でみると製造業が507件(61%)ともっとも多く、小売業75件(9%)、卸売業47件(6%)、医療・福祉42件(5%)、サービス業等94件(11%)と幅広い業種で利用されています。
投資額をみると、1件当たり投資額が約3億7千万円(※)と非常に高額です。投資額を即時償却で全額損金とすれば法人税の税効果(実効税率35%とする)は1億3千万円、税額控除(5%とする)を選択適用した場合、最高で1,850万円の税金の控除が可能となります。
(※)単純平均は約17億3千万円。情報通信業が突出して高額のため除いています。
このように、減税効果の大きい制度ですが、今後の活用においては、幾つか留意頂きたい点があります。
1つ目は、この税制には期限があることです。即時償却は平成28年3月が適用期限となっています。それ以降は50%特別償却となり、その最終期限は平成29年3月です。この時期までに設備等投資を予定している会社は適用の有無を是非早めに検討していただきたいと思います。
2つ目は、計画数値の裏付けをきちんと整えるということです。B類型の適用する実務上のポイントは、
(1)投資利益率の算出の仕方(考え方)と、
(2)経済産業局への申請時期です。
投資利益率は、投資額に対する償却前営業利益増加額(投資年度の翌年3年間の平均)で算出します。利益の増加なので、売上げの増加、経費の削減を合理的に見積もることが出来るかがポイントです。
見込みの数値ですので、シュミレーションした数値の裏付け(過去の実績等)をしっかり説明する必要があります。
3つ目は、申請までに要する期間です。経済産業省の確認書は、設備を取得する前に発行を受ける必要があり、申請から発行されるまでには約1ヶ月要します。
またこの申請には、税理士等が作成する事前確認書の添付が必要ですので、諸々その作成等を考慮した場合、設備取得日の2ヶ月前より検討すべきと考えます。
いままでに本税制のセミナーを随所で開催させていただきましたが、終了後個別で相談をお受けしたときに、適用できる要件はクリアしていても、申請する時期が間に合わなかった例も少なからずあり、残念でなりませんでした。
本制度は、税理士の事前確認書や経済産業局との打ち合わせ等、手間はかかりますが、減税メリットの大きな税制です。弊社には多くの申請実績があります。是非、お気軽に相談ください。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
- 1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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