平成27年11月3日の日本経済新聞朝刊に「高層マンション使った相続税節税、国税庁が監視強化」という記事が掲載されました。
どのような節税策かと言いますと、高層階のマンションは購入価格に比べて相続税評価額(財産評価基本通達による評価額)が低くなるため、購入することによって相続税を圧縮することができ、相続後にそのマンションを売却することによって、現金で相続するよりも手元に多くの現金が残ることになる、というものです。
財産評価基本通達に定められた方法で評価して相続税を算定しているため、「脱税」ではなく「節税」ということになるのですが、国税庁は同じく財産評価基本通達に定められた「6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」を適用することによって、行き過ぎた節税には歯止めを掛けようとしている、ということです。
このような節税策は税務調査において指摘されることになりますが、相続税の税務調査における論点は基本的に次の2つです。
(1)(意図的であるか否かに関わらず)財産に漏れがないか
(2) 財産が適正に評価されているか
この高層マンションの件は(2)に関する当局側の具体的取扱いの見直し、ということになります。
(1)についても、平成24年度税制改正の「国外財産調書制度」の創設、平成27年度税制改正の「財産債務調書制度」の見直しなどが行われました。
事前に財産に関する情報を収集し、監視を強化するという当局側の意向が伺われます。
なお、「国外財産調書制度」は国外に財産を5,000万円超有する場合に、「財産債務調書制度」は所得金額が2,000万円超かつ3億円以上の財産または1億円以上の有価証券などを有する場合に税務署に調書を提出するという制度です。
従来の「財産及び債務の明細書」の提出制度に比べ、罰則規定を盛り込むなど厳格な取扱いとなっています。
ところで、平成25年度税制改正により、今年1月1日以降に相続が発生した場合には基礎控除額が改正前の6割に引き下げられました。
相続財産が基礎控除額を上回ると相続税の申告が必要になりますので、結果として相続税を申告納付するケースが増え、また納付する相続税が増えることになりました。
この対応として相続税対策を検討することも大切なことですが、一方で、上に述べたような監視強化策にも十分に配慮して検討を進めていくことが必要です。
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筆者紹介
- アタックス税理士法人 社員 税理士 村井 克行
- 1987年 南山大学卒。「会計税務の知の集結と事例の体系化」を確立すべく立ち上げた「ナレッジセンター室長」を務めた後、現在は、組織再編や相続対策など、最新の税法・会社法の知識を生かした永続企業のための総合的な支援業務に従事。誠実で緻密な仕事ぶりは多くのオーナー経営者から高い評価を得ている。
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