コロナによる税務調査への影響
税務署は7月に人事異動があり、税務調査も新体制でスタートしていますが、ここ数年は、コロナ禍の影響により実地調査件数は大きく減少せざるを得ませんでした。
法人税調査の場合、平成30事務年度(2018.7~2019.6)の実地調査件数は99千件であったものが、令和2事務年度(2020.7~2021.6)では25千件と25%程度まで落ち込んでいます。
これは、調査を行うことに、緊急事態宣言やまん延防止重点措置が発令されていた時期では実際に納税者の理解を得ることが難しかった事や、移動の制限、不要不急以外で人との接触を避けるべきとの政府の見解があったことが影響しています。
また感染防止のためテレワーク等による関係者の不在や、調査で密を避けるための大きめの会議室等(場所)の確保が必要であったこと等からも難しかったと考えられます。
令和3事務年度(2021.7~2022.6)の結果はまだ公表されていませんが、平成30年事務年度の件数までは届いていないと想像されます。
令和2事務年度の税務調査の傾向
ただし追徴税額は、令和2事務年度(カッコは平成30事務年度との比較)では1,207億円(62%)、1件当たりの追徴税額では483万円(246%)となっています。
これは悪質(売上除外等)が見込まれる、もしくは無申告者への対応等に調査対象の重点がおかれたこと、調査に占める規模の大きな法人の比重が高かったことも大きな要因と考えられます。
実際に国税局が担当する大規模法人(調査課所管法人)では、令和2事務年度(カッコは平成30事務年度との比較)の実地調査件数は1,166件(48%)、追徴税額635億円(79%)、1件当たりの追徴税額5,444万円(164%)であるからです。
また税務署より納税者に連絡等し、自発的な申告内容の見直しを要請する「簡易な接触」は、この期間で接触件数、追徴税額ともに増加しており一定の成果を上げています。
今後の動向
追徴税額の金額だけで調査の円滑化・効率性を語るべきではないものの、税務執行の一貫性・簡素化が求められる中では、調査のあり方を見直すのによい機会であると考えられます。
国税当局はKSK(国税総合管理)システムを有し、e-Tax(国税電子申告・納税)、電子帳簿保存法の改正によるデータのデジタル化は情報分析の精度と簡便さを両立させ、実地調査と簡易な接触の対象会社の選定について、より効果的なものが期待できると考えます。
2022年7月~9月では、コロナ感染者数が従前より激増しました(第7波)。しかし税務調査の件数は前年より増加しているように感じます。
コロナ禍で一定の制限がある中での調査となりますが、効率的かつ効果的な税務調査に期待したいと思います。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員 税理士 愛知 吉隆
- 1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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