税務調査における「重加算税」とは

税務

税務調査が10月から再開!

国税庁は、コロナの影響で3月から延期・中止となっていた税務調査を10月から再開すると公表しました。

調査は、従来通り現地に赴き対面で行うものの、感染防止対策のため必要最小限の人員で効率よく行うとしています。

まだコロナの収束が見えない状況ですので慎重に行われるものと考えますが、とにかく調査は再開され、当事務所にも数件事前連絡が入ってきて対応を行っております。

税務調査で問題となる重加算税とは?

さて、税務調査でしばしば問題となる事項に、重加算税があります。

税務調査で申告した所得に間違い(非違事項)があり、追加納税が発生する場合、増加した税金に10%の加算税が課せられます。

ただしその非違事項について、納税者が納品書等の証憑を改ざんする、売上から除外する、棚卸から除外する等の「仮装・隠ぺい」を行っていた場合には、増加する税金の35%の重加算税が課せられます。

仮装・隠ぺいは、「行為の意味を認識しながら故意に行うこと」であり、
最高裁の判例でも

「・・重加算税を課し得るためには、納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したもの(S62.5.8)」

としています。

重加算税の課税要件に故意の存在が必要である以上、単純な計算ミスや勘違いは当然に該当しないこととなります。

しかし、ある行為が故意であったかどうかは、当事者の頭の中にしかないこともあり調査官が任意調査の中で立証することはほとんど不可能です。

そのため、実務の取り扱いとして客観的にみて隠ぺいや仮装を判断すればよいとしています。

これは重加算税が脱税(偽りその他の不正行為)をした結果を立件する刑事罰ではなく、行政処分である行政罰だからです。

最高裁の判例でも、

「納税者義務違反の発生を防止し、もっと徴税の実を挙げようとする趣旨に出た行政上の措置であり、違反者の不正行為の反社会性ないし反道徳性に着目してこれに対する制裁として科せられる刑罰とは趣旨、性質を異にするもの(S45.9.11)」

としています。

いずれにしても、重加算税を課すかどうかは結局のところ調査官の心象によるところが大きく、単純なミスである場合は納税者側で原因や状況を調査官が納得できるように説明しないといけないこととなります。

なお、「偽りその他の不正行為」は除算期間の特例がないこと(通則法61条)、更正が7年間に及ぶこと(通則法70条)が規定され、重加算税の対象となる事案も実務上は同様に扱われますのでご注意ください。

誰が仮装・隠ぺいすると重加算税の対象になるのか

ところで、仮装・隠ぺいを行った納税者とはどのような範囲でしょうか。

たとえば、役員が不正に売上金を自分の懐にいれて、それが調査で発覚した場合、会社は売上が漏れたこととなり(役員へ返金請求権が発生)税務上は所得の増額となります。

この場合、会社側も被害者ではありますが、責任あるものの行為は会社の行為と同一視され重加算税の対象となります。

この考え方からすると、これが一従業員の行為であった場合は、会社の行為と同一視されるわけではなく、重加算税の対象とはならない、という扱いになりそうです。

しかし、現実はそう甘くはないようです。当局側は管理体制等の実態を見て、実質的に責任を負っているものを会社の行為と同一視する傾向にあります。

この「管理の不備=実質的に責任を負っている」という理屈は、管理上の牽制機能が働く大企業と異なり、管理に人手がさけない中小企業にとっては、いささか納得しづらいように思います。

しかし最近の判例、審査事例をみてもその傾向はほとんど変わっていないため、中小企業は責任ある社員の行動に目を配ることが重要と考えます。

上に述べたように、重加算税の対象となるかどうかは調査官の実態判断に寄るところが大きいので、日頃からしっかりと説明できる体制を作っておくことが肝要です。
 

税務顧問サービス

筆者紹介

アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
※顧問税理士 変更をご検討の方はこちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました