国税局より、令和元年10月に「平成30事務年度法人税等の申告(課税)事績の概要」(以下、申告事績という)が、また、11月に「平成30事務年度法人税等の調査事績の概要」(以下、調査事績という)が発表されました。
これらは毎年この時期に公表されるもので、最近の調査の傾向等を知るのに役立つものです。
申告事績から見る最近の景気動向
まず、申告事績より平成30事務年度(h20.4.1~h21.3.31)では、法人税の申告所得の総額は73.3兆円、申告税額の総額が12.8兆円でした。
申告所得は9年連続で増加しており、前事務年度が70.7兆円で過去最高であったものを、2.6兆円上回り最高金額を更新しました。
平成20年のリーマンショックで大きく減額した法人の利益(所得)が順調に回復してきたことを示しています。
法人の申告件数で黒字申告割合も34.7%(前年34.2%)となっています。
平成20年は黒字申告割合が約26%だったので、ここからも全体的に回復基調であることがうかがえます。
なお、黒字申告とは、申告所得(税務上の利益)がプラスである法人で、例えば当期決算が黒字でも、前事業年度以前に赤字があるために、通算すると申告所得が0円となる法人はこの中には含まれません。
したがって、平成30年度単独では黒字である会社は、もっと多く存在し、例えばTKCが公表している指標では、53.4%の会社が黒字であるとしています(BAST令和元年版より)。
調査事績から見る申告漏れの増加
次に、調査事績によると、税務調査を実地した件数は9万9千件で、そのうち非違事項(修正申告等)があった件数は7万4千件でした。非違率はおおむね75%で、前年とほぼ変わらない水準です。
ただ昨年と大きく変わる事項は、申告漏れの所得金額です。
前事業年度では9,996億円だったものが、1兆3,813億円と38.2%増加し、調査1件当たりの申告漏れ所得金額も1,396万円と前年より36.4%も増加しています。
また不正発見割合の高い上位10業種は、1位~4位までを飲食関連の業種が占め、5位に自動車修理、6位に土木工事が続いています。これらは、前事業年度もほぼ変わっていません。
これらは現金売上の割合が多い業種で、今後も調査対象となりやすいと推察されます。
不正1件当たりの不正所得金額が大きい上位10業種となると、
2位 その他の科学工業製造
3位 産業用電機機械器具製造
4位 パチンコ
となっています。
4位のパチンコ以外は前事業年度には含まれなかった業種です。
ここ最近の国税は法人税調査の主要な取り組みとして、
(2) 無申告法人
(3) 消費税還付申告法人
を対象としていました。
特に海外取引関係に関する非違事項の所得金額は、6,968億円で前事業年度の1.9倍の金額となっています。
近年、国税では国際税務専門官を増員し対応に当たっており、その成果が表れているものと推察されます。
アタックスグループでは、国内税務調査はもちろん、国際税務調査についてもサポートさせていただきます。また、税務調査に関するセミナー開催も予定しております。決まり次第ホームページにアップします。
▼セミナー一覧はこちら
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
- 1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
- ※顧問税理士 変更をご検討の方はこちらをご覧ください。