令和2年度の税制改正大綱が昨年12月に公表されました。
弊社でも今年2月に東京、名古屋で税制改正セミナーを開催しましたが、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりセミナー参加自粛等で当日欠席せざるを得ない方もいらっしゃったようでした。
そこで、今回は法人関係の主なもの4つをワンポイント解説いたします。
オープンイノベーション税制の創設
新規事業者への投資(出資)に対し、25%の所得控除(特別勘定)ができる税制です。
日本企業の技術開発、製品開発等の「自前主義」から脱却を図るために、新規事業への投資を促進することを目的としています。
新規事業者(設立10年未満)は経済産業大臣の証明が必要であり、出資額も1億円以上(中小企業者は1千万円以上)が必要です。
5G投資促進税制の創設
5G(第5世代移動通信システム)のための設備を取得した場合、30%の特別償却もしくは15%の税額控除が受けられるものです。
5Gは、超高速・大容量・多数同時接続等により、8K動画配信、遠隔医療、自動運転、スマート工場、スマート建機などこれからの産業構造を大きく変える可能性があります。
すでに海外で5Gを導入している国もあり、その遅れを取り戻すべく税制のサポートを行うものです。
設備の取得についても、認定導入計画を作成し、主務大臣の確認を受ける必要があります。
この2つの税制(オープンイノベーション税制・5G投資促進税制)は、第4次産業革命(IoT、AI等)がこれからの産業構造(あり方)に大きな変化を与える中、グローバル社会で生き残るために極めて重要な制度であるといえます。
グループ通算制度(連結納税制度の見直し)への移行
企業グループ全体を1つの納税単位とする連結納税制度は、各法人の所得を調整して申告する(一体申告方式)ための手続きが煩雑でした。
今回、これが、企業グループの各法人で個別に税額等を計算し、損益通算等を行う簡素な仕組み(個別申告方式)に変更されます。
この制度の導入(令和4年4月1日)に伴い、すでに連結納税制度を適用している法人は新しい制度に移行するか、単体の納税制度に復帰するか、選択することができます。
細かな規定はここでは取り上げませんが、この制度は、通算制度の適用開始時の
②時価評価課税
に特に留意する必要があります。
具体的に適用を考える場合は事前に税理士にご相談ください。
消費税の申告期限の延長の特例
法人税の確定申告の提出期限は2月以内が原則で、特例として延長(一般的にはプラス1月)できますが、消費税は2月以内で特例はありませんでした。
このため、法人の申告と消費税の申告がバラバラになり、決算事務手続きに支障をきたすこともありました。
今回の改正は、法人税の申告期限延長を選択している法人については、消費税の申告期限延長を1月認めることとなります。
期限延長には届け出の提出が必要で、提出した事業年度から適用可能となります(例外あり)。
申告延長により、納税も遅らせると延滞税が課せられますので見込み納付等の対応も検討すべきと考えます。
アタックス税理士法人では税制改正を素早くキャッチしお客様に提供を行っております。
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筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
- 1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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