『人手不足』を解消する方程式~最大の鍵は生産性!

経営

厚生労働省が発表した2017年8月の有効求人倍率(季節調査値)は、1.52倍。雇用の売り手市場は今後暫く続きそうです。

このような労働環境を背景に、先日、日本商工会議所は全国の中小企業を対象にした人員の過不足状況等の実態調査である「人手不足等への対応に関する調査」の集計結果を発表しました。 「人手不足等への対応に関する調査」の結果概要は以下の事項を明らかにしています。

・人手不足であると回答した中小企業の割合は60.6%(前年55.6%)
・人手不足であると回答した割合の高い業種は、宿泊・飲食業が83.8%、運輸業が74.1%
・人手不足が企業経営に悪影響(受注を逃したり、営業時間を短縮せざるを得ない等)を与えているまたはその懸念があると回答した割合は68.7%

比較的労働集約型の企業が多い中小企業において、人手不足がますます深刻化している状況がうかがえます。

実際、私が担当させていただいているクライアントの社長からは「いい人を紹介してくれませんか?」と尋ねられるだけでなく、「人手を確保するために他企業を買収したいのだけど、、、」といった大掛かりな相談まで頂きます。 人手不足は中小企業にとって、まったなしの経営課題であることが日々のコンサルティングの中で実感されます。

しかし、今一度、立ち止まり、「人手不足」をシンプルかつ冷静に考えてみましょう。 企業が人手不足を感じる状況は、その製品・サービスについて、『受注>生産』の関係にあり、人手が足りないため生産量が受注量に追いつかない状況といえます。 生産を人の切り口で分解して『生産=人手×生産性』とすると、人手不足と感じる状況とは、『受注>生産=人手↓×生産性』となっている状況です。

組織づくりのため、長期的な観点で人材を採用・教育することは必要です。一方で、人手を増やすためのコストは、募集費、採用費、教育費、定着費と多額にわたり、経営環境が不安定な中小企業にとって、大変な負担です。また、従業員に過重労働を強いることは、あってはならないことです。 こう考えると、闇雲に人手を増やし、生産を受注に追いつかせることは、中長期の企業経営にとってはマイナスしかなさそうです。

では、人手を増やす以外に、受注=生産の等号を成り立たせ、人手不足を解消するにはどうすればよいのでしょうか。 上記の式は

(1) 受注をコントロールすること
(2) 生産性を向上させること

の二つの方策を示しています。

(1) 受注をコントロールする
現状の人手による生産にあわせるよう受注を見直す方策です。この方策をとるにあたっては、折角顧客から頂いた仕事を単純にお断りするのではなく、

・本当にその受注が企業の利益となっているのか
・何が利益効率の高い、あるいは、成長性の高い受注なのか

を顧客や商品別のセグメント別に把握できるよう現状分析し、優先順位をつけ、受注を選別していくことが重要となります。

(2) 生産性を向上させる
現状の人手でも受注にあわせた生産ができるように現状の業務・体制を見直す方策です。 この方策を大きく分類すると、

・外注化:自社がやっていたものを協力者にやってもらう
・機械化:人がやっていたものを機械にやってもらう
・効率化:自社の人により短い時間でやってもらう

の3点があります。

これらを効果的に実行するためには、それぞれ、

・外注化:企業が自社の強みを最大限に発揮すべき主要業務は何か?
・機械化:その機械化の費用対効果はどれだけか?
・効率化:業務全体の流れやその情報に目詰まりが起きている箇所はどこか?

といった、ビジネスフローや業務プロセスの現状分析が欠かせません。

これらの人手不足を解消する方策は、頭数を増やすことによる解消ではなく、現状の仕事の質を見直し、それを良化することに他なりません。 それは、一朝一夕に成しえるものでなく、それぞれの観点での現状分析から個別の課題を抽出し、その課題解決のため、明確な目標とタイムスケジュールをもった計画的な改善行動が必要となります。

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングは、ファイブステップ(調査分析→問題発見→課題整理→改革提案→実行支援)コンサルとして、人手不足の解消をはじめとした中小企業の経営改善に関する様々なお悩みに対し、現状分析から課題解決のためのご支援を行っています。こちらからお気軽にご相談ください。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 公認会計士 森下 大
1999年 早稲田大学卒。中堅中小企業の事業再生・買収のアドバイザーとして、財務・事業デューデリジェンス、経営計画策定支援を中心としたコンサルティング業務、並びに、計画経営推進のための経営顧問業務に従事。公認会計士としての知識・経験を活かし、社長の良き相談相手として伴走型の支援を行うことで定評がある。
森下大の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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