中国経済が減速しています。
直近6ヶ月(5月~10月)の主要指標の前年同月比較の成長率(%)は以下のようになっています。
【大規模企業付加価値増加額】
6.1(5月) 6.8(6月) 6.0(7月) 6.1(8月) 5.7(9月) 5.6(10月)
【固定資産投資】*1月からの累計比較値
11.4(5月) 11.4(6月) 11.2(7月) 10.9(8月) 10.3(9月) 10.2(10月)
【小売飲食等消費額】
10.1(5月) 10.6(6月) 10.5(7月) 10.8(8月) 10.9(9月) 11.0(10月)
これらの指標を見ると、生産や投資関連は前年同月比で成長はしていますがその勢いはじりじりと鈍化しています。
現地の経営者に景況感をお聞きすると、建機や携帯電話関連は厳しい、自動車関連は横ばいということでした。
また、上海などの大都市の新規ビル建設も以前のような勢いは見られません。
一方で消費関連は10%以上の成長率を維持し、10月には11%となりました。
大都市のショッピングモールは賑わっていますし、高級レストランも行列です。
ただ、前年に比べてより賑わっているかと言われるとそうでもない印象です。
肌感覚では昨年と同じくらいという感じです。
このような状況下で中国子会社を抱える日本企業はどう対処すべきでしょうか?
未来のことを正確に予測するのは難しいですが、中国経済がしばらく低迷することを想定して準備をされておけば“被害”も少ないかと思います。
以下のような検討をお勧めします。
1.自社の業界環境を再分析する。
景気減速の影響は業界によって様々です。
ステレオタイプに「中国はダメ」ではなく、自社業界にとってどうなのかを詳細に分析されることをお勧めします。
2.撤退シミュレーションを行う。
清算手続きは大変難しいことはご承知かと思います。
特に労務・税務・税関の対応には苦労します。
税務局や税関の調査で問題が発覚してから当局との“交渉”で火消しする方法もありますが、反腐敗運動以降はそれも難しくなっているようです。
事前のシミュレーションでは以下がポイントです。
(1)税務リスクチェック
税務調査で指摘されそうな部分を是正しておくことです。
特に税関調査は厳しいので十分な準備が必要です。
(例えば、保税取引で税関理論在庫と会社実際在庫に差異がある場合、一般貿易で通関単(税関や検疫局が署名した通関証明書)とインボイスに差異がある場合などはその理由を説明できるようにしておくことが賢明です。)
(2)資金繰り
解散公告後は親会社からの資金投入が原則できません。
よって中国子会社が清算手続き中に資金ショートすると破産に移行する可能性があります。
破産になると中国子会社幹部の責任を追及される可能性もありますので、破産に至らないよう十分な検討をしておく必要があります。
(3)中国人キーマンの協力
清算事務を進めるに際して様々な書類を作成するなど現場の協力が必要になります。
このため、「この人には残ってもらわないといけないがこのキーマンを引き留めるためにはどうするか?」を考えておくことが重要です。
金銭で引き留めるなら、その分も資金繰りに影響します。
(4)持分譲渡先を探索する
持分を売却できそうな企業をピックアップしておくこともお勧めします。
持分売却は清算に比べて苦労が少ない方法です。
3.当局とパイプのある専門家との関係を構築する。
最後は“交渉”勝負という局面もあろうかと思いますので、パイプを持っている専門家との関係を構築されることも効果的です。
アタックスでは中国の最新経済ニュースを配信するとともに中国を含めた海外ビジネス支援を展開中です。こちらも参考にしてください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス 海外サポート室 室長 諸戸 和晃
- 大手住宅会社勤務を経てアタックス入社。株式公開、企業再生、M&A支援等のコンサルティング業務に従事。2011年より2年間北京赴任。赴任中は北京中央財経大学への留学、中国系会計事務所「中税咨询集团」(北京)で業務。帰国後、海外サポート室の室長として、中堅中小企業の海外進出に関する支援業務に注力している。
- 諸戸和晃の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。