大手メーカーによる製品データの改ざんなど企業不祥事が続いています。
ある機関の調査によれば、2014年1月から2017年6月までに、上場企業によって公開された不祥事にかかる調査報告書120件のうち、92件が意図的な不祥事(不正会計、会社資産の不正流用など)という分析結果になっています。
こうした不祥事をもたらす背景は様々ですが、その原因として、ガバナンスが十分に機能していないということは否めないと思います。
ガバナンスというと、少々堅苦しいものと捉えてしまいますので、ここでは、
「会社の経営が健全に行われるよう、守るべきルール(行動基準)や業務手順を決め、決まったことを着実に実行して行くこと」
としてみましょう。
では、中小企業にもガバナンスは必要なのでしょうか?
ガバナンスが必要である理由
私は毎年、かなりの件数の税務調査に対応させていただきます。無事に終わる場合もあれば、予想外の否認を受ける場合もあります。
たとえば、A社(3月決算)の支店長が、経営会議の決裁を受けて、新規設備工事を工事業者に依頼したとします。当初は3月末までに工事が完了する予定だったのですが、事情があって工期が延びてしまい、結局終わったのは4月になってからでした。困った支店長は、工事業者に対し3月末までに工事が完了したことにするための書類を作成するよう依頼しました。
その後に税務調査があれば、会社としては税金を免れる意図はまったくなく、支店長による別の意図から行った行為だったとしても、仮装隠ぺい(あるものを隠したり、ないものを事実かのように見せかけること)として重いペナルティーにつながることになるのです。
社長がすべてを掌握、コントロールできれば、健全経営が行われるでしょう。しかし、中小企業であっても、ある程度の規模に達すればそういうわけにはいきません。万が一の間違いを未然に防ぐリスクマネジメントとしてガバナンスは必要になります。
ガバナンスがもたらすメリット
リスクマネジメント以外にも、次の点も大いに関係します。
第1に、組織風土です。ガバナンスには、良い組織風土が重要です。決めたことが守れない組織より、着実に実行する組織の方が、良い組織風土を築き、その後もさらに強い組織を目指し続けるはずです。
第2に、業務効率化です。その会社や業務にマッチしたルールなどを整備することになりますが、その際に、誰もが理解できる、分かりやすいルールや業務手順にすることで、業務上の障害などが減り、スムーズな業務につながるからです。
ガバナンスには、経営トップの考え方や価値観がとても大切です。それが、組織全体に伝わるからです。そして、役員会などで粘り強く検証を行うことです。それが、組織に根付かせるのに欠かせない条件です。
アタックスグループでは、中堅中小企業の税務リスク対応、組織風土改革、中期経営計画策定・推進、経理業務改善などのご支援を行っております。こちらからお気軽にご相談ください。
筆者紹介
- アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人
- 1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。
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