手厚い手許資金を原資に大企業がM&Aや再編を活発化させている。国内市場の縮小や東日本大震災を機に収益源の分散や事業再構築を進めようとしているのだ。記事はリコーによる、HOYAのペンタックス事業買収についての話題である。
このM&AによってHOYAは非中核事業の売却を、リコーは自社のデジカメ事業の強化やペンタックスの欧米販路の活用を図るという。両社とも、M&Aというツールを使って事業の再構築を短期間に成し遂げようという考えだ。
ではM&Aを活用した事業再構築や業界再編、経営統合と言った話は大企業だけのものなのであろうか。答えは否であると私は考える。
日本の名目GDPは1997年から昨年までに36兆円も減った。デフレによって様々な業界で販売価格が下落している。そして今後の人口減少と少子高齢化の進展により、間違いなく内需の減退は進んで行くであろう。
自社単独での競争戦略やコスト低減の積み重ねだけでは、中長期の展望が見えなくなってくるのは中堅中小企業もまったく同じである。むしろ経営基盤の弱い中堅中小企業だからこそ事業再構築や業界再編、経営統合を模索することを諦めてはならないと思う。
個の強みや合理化策は、統合する会社・事業全体に展開できれば効果はより大きなものとなるだろう。一企業では見えない将来展望が見えてくることも多いのではなかろうか。自社の強みを日々磨きながら将来の事業再構築の構想を練ることは、正に経営者の大切な仕事の一つである。
一方、中堅中小企業にとってM&Aは簡単なことではない。経営と一体化したオーナーシップ、脆弱な財務内容、M&Aの企画・推進や統合作業面での人材不足など、大企業とは違った課題が多いのだ。大切なのはM&Aの企画・交渉・実行などの実務に長けた、信頼できる専門家を活用することだ。
すべて自力で解決しようとすれば困難に直面して頓挫してしまったり、高値づかみや買収後にリスクが発覚するなどの失敗を多くの会社が経験しておられるのを私は見聞している。
<参考記事>
「リコー「ペンタックス」買収発表 デジカメ再編加速」
2011年7月2日(土)日本経済新聞 朝刊
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 廣瀬 明
- 1968年生まれ。企業再生、財務・事業デューデリジェンス業務、M&A、株式公開のサポート等に従事。中堅中小企業への豊富な支援業務を通じて培った知識と経験を活かし、現在大阪事務所のプロジェクトマネージャーとして活躍中。
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