清水建設が新卒採用に外国人向けの専用説明会を開催した。同社の本社社員は約1万人いるそうだが、そのうち外国人は20人程度とのことである。これまでは、新卒向け合同説明会で留学生の疑問に応えることができず、採用が少なかったようである。
しかし、10年後に海外売上高比率を20%に引き上げるという戦略を掲げたことで、積極的に外国人留学生採用に取り組むことになった。国内の建設市場が1990年代から半減の約40兆円に落ち込み、海外需要の開拓が必須となったのが背景である。
就職情報サービスのディスコが実施した「外国人留学生の採用に関する調査(2010年8月)」によると、2011年度に外国人留学生を採用すると回答した企業は2010年度実績の2倍となった。海外拠点を持たない企業でも「採用する」とする割合が6.4%から12.3%に高まっていて、外国人留学生に対する採用意欲が強まっている。
また、国別では、「中国」が最も多く、外国人留学生を採用すると回答した企業の60%が採用を考えている。グローバル人財が不足する企業にとって、優秀な外国人留学生を採用して、海外進出を促進するのは、今や当たり前の流れとなった。
しかし、採用した外国人との摩擦も多いようである。例えば、スキルを学んだら退職してしまうとか、考え方が異なりそのギャップを埋めるのに時間がかかるなど苦労も絶えないようである。
この問題への対応としては、その外国人の気質やその国の文化などの基本部分を理解し、本質を掴むことである。例えば、中国は、地域によっても、年代によっても気質が異なる。このため「中国人」として、一纏めにできない。したがって、十分に基本部分を研究する必要があるし、清水建設のようにコミュニケーションを密にして相互理解を深めることも大切である。
海外展開が避けて通れない時代である。海外展開成功のキーワードである「現地化」のためにも、本質を掴んで対応することが大切である。
<参考記事>
「清水建設、留学生専用の説明会」2011年4月25日(月)日本経済新聞 朝刊
筆者紹介
- 株式会社アタックス 海外サポート室 室長 諸戸 和晃
- 大手住宅会社勤務を経てアタックス入社。株式公開、企業再生、M&A支援等のコンサルティング業務に従事。2011年より2年間北京赴任。赴任中は北京中央財経大学への留学、中国系会計事務所「中税咨询集团」(北京)で業務。帰国後、海外サポート室の室長として、中堅中小企業の海外進出に関する支援業務に注力している。
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