成功する新規事業!~その決め手は“動機と出合い”

経営

筆者は長年、起業後上場を果たした若手経営者と対談形式の夏期経営トップセミナーを開催しています。 8月は昨年秋に東証マザーズに上場したユーザベース(以下U社)の梅田優祐社長とのセミナーでした。

梅田氏が語った起業から上場までの苦労話はこれから起業する若い人、あるいは成熟産業に属し、売上縮小に悩んでいる若手事業承継者にとって気づきの多い内容だったのでご紹介いたします。

U社の事業は二つ。

一つは梅田氏が起業の動機となった「SPEEDA」で法人向けに企業・業界に関する経済・金融情報を提供するサービスです。現在では、上海・香港・シンガポール・スリランカに拠点を持ち、「SPEEDA」を利用する企業は600社を超え、アジアナンバーワンのサービスになっています。

梅田氏は大学卒業後、戦略系コンサルティングファームと外資系証券会社でコンサルタントとして働いた後、高校時代の友人と証券会社時代の友人の2人と一緒になって27歳で起業します。 起業の動機はコンサルタント時代に業界分析レポートをまとめる際に情報収集作業に多大な時間をとられ大変苦労していたことでした。

梅田氏はこの情報収集をグーグルの様に手軽に検索収集出来れば、事業会社、金融機関、証券会社、コンサルティングファーム、監査法人などで働く人に役立つと考え、スタート時点では自分自身の苦労した経験が活きる戦略系コンサルファームとPE(プライベート・エクイティ)ファンド20社に焦点を絞り開発を進めました。 そしてシステムを作成する人材がいない、コンテンツが手に入らないという二つの大きな壁を乗り越え「SPEEDA」の事業化を成功させました。

U社が手掛けた二つ目の事業は「NewsPicks」です。一つ目の「SPEEDA」事業だけでも十分上場できる態勢にありましたが上場前に周囲の反対を押し切ってこの事業にチャレンジしました。

チャレンジした動機はスマホ・ソーシャル時代となりメディア業界の構造が劇的に変わり、やるなら今しかないという強い思いでした。 この事業は主に政治経済ニュースを個人ユーザーに分かり易く提供するものです。ニュースに求められる2大欲求、「発見」と「理解」をユーザーに提供する仕組みとなっています。

U社が依頼している、記事情報にコメントする人々(プロピッカー)の解説(キュレーション)は確かに「なるほど」ということでユーザーの理解を深めました。 現在この事業は有料課金ユーザーが4万人となっており急成長中です。

また今年5月にこの事業をDOWJONES社(ウォール・ストリート・ジャーナルの親会社)と共同出資でニューヨークに会社を設立し米国展開のスタートを切っています。

以上のようにU社はきわめて順調に事業を展開しており一見、順風満帆の連続の様ですが「SPPEDA」立上げの直後、2008年のリーマンショックに遭遇し、資金難から事業の継続を断念しなければならないところまで追い込まれました。 この時3人の創業メンバーが本音で話し合い、起業のビジョン・創業の思いを再確認し、事業継続したことが今日の成功に繋がりました。

またU社が成長軌道に乗り始めた頃、組織に疲れが出て来たため、組織運営の7つのルール(HPご参照)を決め、一体感を取り戻したこともその後の成長に繋がりました。

梅田氏は創業から8年間で学んだことを次のように語ってくれました。

(1) ビジョンは明確・戦略は不明確
(2) 「戦略」よりも「人」
(3) 文化のない組織は絶対勝てない

筆者は梅田氏との対談を通して強く思ったことがあります。

インターネット・AIなど新しいテクノロジーの進化に伴う社会変化の激しい分野はビジネスチャンスが多く、多くの起業家がチャレンジします。 しかし成功する確率は低く、成功する起業家は自ら事業に夢中になるのは当然として、種々な困難を乗り越えるために、種々な局面で他人の力を借りる事が必要です。その人々との出合いを生かすことが成功の鍵ではないでしょうか。

アタックスグループでは経営者、経営幹部の皆さまが優れた企業の経営を現地・現物で学ぶ『アタックス視察クラブ』を開催しています。視察クラブは参加された皆様の出合いの場でもあります。興味のある方は是非ご参加ください。

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士 丸山 弘昭
数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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