一般的に、経営資源の三要素はヒト・モノ・カネと言われています。最近は、これらに情報を加えることもありますが、いずれにせよこの三要素が経営の根幹をなすことに大きな異論はないと思います。
これらの資源を効果的かつ効率的に用いるために、大企業であれば人事部門や、調達・開発部門、財務部門といった各々専門の組織と担当者を置いて日々の企業活動を行っていく訳ですが、
中小企業の場合、専門の組織や担当者を置くだけの余裕がないことが多く、勢い、社長が自らヒト・モノ・カネのコントロールに大きくかかわらざるを得ません。経営者を、経営のプロと位置付ければ、必然的に社長はヒト・モノ・カネ各々についてもプロであるべき、ということになります。
しかしながら、「ヒト」「モノ」に関して一家言を持つ社長は多くても、財務、なかんずく金融取引に長けている、と自負される社長は余り多くいらっしゃらないように思えます。昨今は少し落ち着きましたが、一時前の金融デリバティブの問題などはその最たる例だと思います。
多くの企業が、金融機関から勧められるがまま、不相応な取引を拡大し、本業に重大な影響を与える結果を招きました。また、今でも、自社の事業特性や収益力に不相応な返済計画となっているために、本来無用な資金繰りの心配をしている会社も多くあるようです。
もちろん金融機関側にも問題があるのですが、やはり経営者として金融取引の条件が自社に対してどのような影響を与えるのかを的確に理解して正しい判断をすることが非常に重要になっていると思います。
自社の商品の仕入・製造・販売、幹部の登用や異動については、最後は自分の判断・責任で行っているのに、金融取引については、金融機関の言うことを鵜呑みにしたり、中途半端な理解だったり、必要に迫られて場当たり的な対応だったり、と言ったケースが非常に多いように思えてなりません。
別に、金融工学やファイナンス理論等の高度な知識を求めている訳ではありません。「ヒト」や「モノ」の場合と同様、会社がやろうとしていることにつき、自分で責任が取れる、万一失敗した際にも自分で納得できる程度の理解をしておく、ということです。
実際には、商売をしていく上では事業に直結する「モノ」「ヒト」に対する知識や理解が優先し、カネは結果回ればよい、となってしまいがちな面も否めませんが、やはり社員や取引先、そして自らの生活を預かる経営者、つまり経営のプロとして、「カネ」についてもプロとしての意識を高めていただきたいと思います。
一方で、銀行に20年以上席を置いた実感としても、“銀行の常識は世間の非常識”とも言われるように、金融は、「モノ」「ヒト」と異なり本業と少し離れた存在であるが故に、事業会社における経営判断とは異なる知識や感覚が必要であることも事実です。
従って、経営者の皆さんに「カネ」のプロとなっていただく一手段として、専門家の活用を検討されてはいかがでしょうか。金融分野の強化が、売上や営業利益に直結する訳ではありませんが、不必要な金利負担を削減する、資金繰りを心配する必要がなくなるという点からも、専門家のサポートを受けることの経済効果は十分に見込めると思います。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス 執行役員 金融ソリューション室 室長 松野 賢一
- 1990年 東京大学卒。大手都市銀行において中小中堅企業取引先に対する金融面での課題解決、銀行グループの資本調達・各種管理体制の構築、公的金融機関・中央官庁への出向等を経て、アタックスに参画。現在は、金融ソリューション室室長として、金融・財務戦略面での中堅中小企業の指導にあたっている。
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