APIとは何か?~中堅中小企業の業務改善に朗報!

API 経営

働き方改革の前に業務改善

4月から改正労働基準法が施行され、社員の労働時間管理に係る社会的な関心が高まる中で、「働き方改革」をキーワードに企業の様々な取り組みが話題になっています。

長時間労働を可視化して超過残業者に帰宅を促したり、テレワーク、フレックスタイム制度など柔軟な勤務制度の導入を検討する会社も増えてきました。

しかし、会社の収益は社員の労働によって生み出される以上、単純な労働時間の削減は会社の収益力低下を招きます。

一方で、社員にこれまでと同じような成果やアウトプットを期待しつつ、労働時間の削減を求めることは、現場に負担をかけることになり、隠れ残業や時短ハラスメントといった「働き方改革」の負の副作用が発生します。

つまり、働き方を変えるためには、その前提として、生産性を維持したまま、労働時間を削減することに成功する必要があるのです。

そのためには、「働き方改革」を議論する前に、いかにして業務改善を実現するかを議論する必要があります。

なぜ、オフィスワークのムダがなくならないか

業務改善では、日常的な業務に存在する「ムダ」の排除が求められますが、オフィスワークの「ムダ」の発見は難しいものです。

なぜなら、扱っている成果物が目に見えにくい「情報」だからです。

例えば、工場であれば、在庫が増えすぎると現場が散らかり「作りすぎのムダ」が一目でわかります。

一方、オフィスにおいては余計な情報や成果物を作っていても、データはコンピューターの中に格納されてしまい、「作りすぎのムダ」を発見することは困難です。

また、多くの社員が関与して1台の製品を製造する製造現場では各工程が細分化され、それぞれの作業標準が“見える化”されていますが、 中堅・中小企業のオフィスワークにおいては、特定の社員が全ての工程を1人で受け持ち、業務自体がブラックボックスになっているケースも少なくありません。

そのため、オフィスワークでは、製造する各工程で発生する「加工のムダ」や「手待ちのムダ」が目立ちにくい傾向があります。

つまり、社長や経営幹部がどれだけ声を張り上げて、ムダな仕事の削減を唱えたとしても、業務の構造自体を見直さない限り、オフィスワークのムダは簡単にはなくならないのです。

「API」により変貌する情報システムのあり方

最近は、業務を抜本的に改善するために、情報システムの見直しや導入を検討する企業が徐々に増えてきました。

この数年間で、スマートフォンやクラウド技術の普及により企業システムを取巻くアーキテクチャー(技術基盤)は、劇的に変化してきており、従来では考えられないようなコストとスピードで活用することが可能になりつつあります。

そして、こうした企業における情報システムの技術変革の中心にあるのが「API」と呼ばれる技術です。

「API」とは、Application Programing Interfaceの略で、ソフトウェアとソフトウェアとをつなぐ「窓」のような機能を果たすコネクティング技術です。

本来は独立しているシステムがその「窓」を経由して、一定の規約に従って通信することで、他のシステム内のデータを引き出したり、書き替えたりすることが可能になります。

例えば、従来は生産管理のシステムと販売管理のシステムとが異なるベンダー製品を用いている場合、これらのシステムを連携させることは困難でした。

それは、「API」のような「窓」が存在しなかったからです。
特別なカスタマイズを施して機能追加することも可能でしたが、それには多額のコストを要し、多くの中堅・中小企業ではシステム間のデータ不整合等を解消するためのデータ加工を手作業で対応せざるを得ませんでした。

しかし、「API」の登場により、高いセキュリティレベルを確保したうえで、異なるシステム同士が連携し合うことが可能になりました。

「つなぐ」ことで可能になる効率化

APIを用いて異なる情報システムを連携できることは、社内の業務改善の進め方にも大きな影響を及ぼすことになります。

専用システムと定型的/一般的な機能を有するパッケージソフトとをつなげることが可能になるからです。

従来は、現場サイドでは専用のシステムを導入し、そこから出力される紙やデータを経理や人事に回付して、それに基づいて管理部門が経理処理や給与計算を行うのが一般的でした。

しかし、今日では、専用システムとパッケージソフトとをAPI連携させることが可能になったことで、現場担当者が情報を入力するだけで、経理部や人事部が最終的に必要とする情報作成まで自働化することが可能です。

これまで部署と部署との間にあった受渡しや加工の工程を全て省略し、専門的な処理はプログラムに行わせることで、スピードも正確性もヒトが手作業でやっていた時の何倍も改善することができるのです。

中堅・中小企業こそ「API」の活用を検討すべき

APIによる情報システムの連携は、現実的な業務改善を検討するうえで、非常に有効な手段です。

当社が関与した案件でも、
「これまで大量に処理していた入力作業がなくなった」とか、
「専門的な知識がない人が操作しても正確な会計仕訳を作成できるようになった」
といった結果を確認しており、APIを用いた業務改善の有効性を感じつつあります。

大企業に比べてヒト・モノ・カネに制約のある中堅・中小企業こそ、「API」のような有用なテクノロジーを積極的に取り入れ、自社に最適化された「システム群」を構築することが、今後のITを活用した業務効率化の観点からは
重要になってくるであろうと考えます。

アタックスグループでは、中堅中小企業の皆様の業務改善をサポートしております。
経理業務にかぎらず業務改善に関するご相談がございましたらお気軽にご相談ください

筆者紹介

アタックス税理士法人 税理士 丹羽亮介

アタックス税理士法人  公認会計士・税理士 丹羽 亮介
東北大学経済学部卒。2004年、公認会計士試験合格後、監査法人トーマツに入社。新興企業へのIPO支援を主に扱うトータルサービス2部に所属し、監査業務をはじめ、上場支援業務等(予備調査、決算早期化、連結パッケージ導入支援等)に従事。
その後、2008年、トヨタ自動車株式会社に転職。経理部に所属し、株式グループの主担当として、トヨタが保有する1兆円を超える政策投資株式の管理や、500社を超える連結子会社・関連会社の判定ルールの見直し、株主総会の事務局などトヨタの投資政策、資本政策全般に係る幅広い業務を担当。
2012年、自分の学んできたことを活かして、中堅・中小企業の成長に貢献できる仕事がしたい、顔の見えるお客様に心から喜んでいただけるサービスを提供していきたいとの思いから、アタックス税理士法人に入社。

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