中国発の新型コロナウイルスの感染状況はかなり落ち着いてきましたが、最近になって、北京市で新たにクラスターが発生するなど予断を許さない状況になっています。
入国が制限される状況は続いており、日本人の中国への入国も、3月31日に始まった中国への渡航ビザの全面停止措置が継続しているために正常化には至りません。
地域によっては、中国政府(各地の外事弁公室など)が発行する招聘状などを入手することにより入国が可能になっているところもあるようですが、赴任者に限定されているようで、出張者が気軽に渡航できるようにはなっていません。
中国に入国できない今、中国子会社の管理はどうする?
このような状況を受けて、日本親会社では、これまで出張者が行ってきた中国子会社の財務チェックや内部統制チェックをどのようにするかと頭を悩ませているようです。
しかし、最近では、リモートを活用することでこれを解決しようとする動きが増えています。
パソコン内蔵のカメラにインボイスなどを映してチェックするだけでなく、ポータブルカメラを使って、工場内をリアルタイムに映し、原材料の保管状況や機械の稼働状況を、カメラを通して目で確認するなどが行われています。
通信の機器や環境が発達したおかげで、画面が固まったりすることなくスムーズにやりとりができているようです。
さて、このようなチェックの目的はさまざまありますが、その一つに「不正防止」があります。
定期的に帳面や現物をチェックすることで「不正をしても発覚する」という心理的なプレッシャーをかけて不正を防止しようというものです。
しかし、ただやみくもに帳面や現物を見ているだけでは、相手に「このチェックなら不正を隠すことは可能だ」と思われてしまうことにもなり、防止効果が薄まってしまいます。
不正を防止するための4つのポイント
では、効果的なチェックをするためには何が必要なのでしょうか?
以下に4つポイントを挙げます。
1.不正事例を研究する
不正事例を研究することで、チェックすべきポイント、管理すべきポイントが把握できます。
これにより、不正発生要因の大部分を抑えることができ、また、メリハリをつけたチェックができるので効率も上がります。
公表されている不正事例としては、以下のような事件が参考になるかと思います。
JDIのケースは日本国内での事例ですが、中国でも発生しうる切り口です。
・大和ハウス大連合弁子会社の横領事件
・JDIの不正会計事件
2.ルールや環境を整備改善する
上記の不正事例を踏まえて、自社の業務ルールが有効なものかどうかをチェックします。
ルールがなければ整備します。
このチェックで不正が発生する可能性がある部分が分かったらそれを改善します。
また、現物管理においては、例えば原材料であれば、入出庫業務フローの整備だけでなく、防犯カメラなどの環境整備も進めます。
3.チェックする
ルールや環境が整備されてもそれが適切に運用されないと効果がありませんので、そのチェックを行います。
これまでは出張してのチェックでしたが、前述のようにリモートを活用して、月次の業績連絡会議などの時間を使ってインボイスなどの原始証憑をチェックしたり、現物を目で確認します。
出張よりもこまめに確認することができるかと思います。
4.現地日本人赴任者を教育する
財務のプロである日本親会社の経理部門の方の入国は困難ですが、技術などの製造現場の赴任者の方は入国しやすいようです(経理部門の方に比べてという意味ですが)。
そこで、リモートチェックする際に、入国できた日本人赴任者に協力してもらえるとコミュニケーションもスムーズかと思います。
しかしいきなり、製造のプロの方に、財務の専門用語を理解してくれと言っても難しいと思います。
できれば、赴任前に財務管理研修を行い、日本経理部とスムーズにコミュニケーションできる土台を作っておけるとよいでしょう。
赴任後でも、月次会議後に30分でも1時間でもウェブを使っての研修ができますので、実施していただければと思います。
ウィズコロナ時代の中国子会社管理にお困りなら
他にもポイントはありますが、以上4つのポイントが重要なものだと考えています。
これらを実施することで、新型コロナウイルス感染症拡大で移動が制限されていても中国子会社を効果的に管理することは可能です。
アタックス海外サポート室では、中国子会社のウェブチェックを支援しています。
例えば、貴社が現地と連絡会議を実施する際に当社コンサルタントも参加し、チェックのアドバイスをしたり、疑義がある点について追加で質問をしたりすることでウェブチェックを効果的なものにするお手伝いをしています。
ウィズコロナ時代の中国子会社管理の方法を模索している企業様はご相談ください。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス 執行役員 海外サポート室 室長 諸戸 和晃
- ミサワホーム勤務を経てアタックス入社。株式公開、企業再生、M&A支援等のコンサルティング業務に従事。2011年より2年間北京赴任。赴任中は北京中央財経大学への語学留学、中国系会計事務所「中税咨询集团」(北京)で業務。帰国後、海外サポート室の室長として、中堅中小企業の海外進出に関する支援業務に注力している。
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