高齢者を中心にワクチン接種は進んではいるものの、新たな変異株(デルタ株)の出現で感染者が激増しており、飲食業、宿泊業、旅客運送業など最悪の状況にあります。
今こそ企業は自己変革が問われておりウィズコロナの新常態に合わせて生き残らなければならないし、危機を乗り越えることによって一層強くなることができます。
石油メジャーのロイヤル・ダッチシェルが自社の長期的繁栄を図るため1980年代に長寿企業の研究を行いました。
この研究によると危機を乗り越え繁栄を続ける長寿企業の共通要因は4つです。
長寿企業4つの共通要因
共通要因①:環境変化
1つ目は「環境変化に敏感である」です。
長期的な視点に立てば、
(1) グローバル化
(2) IT(インターネット)・AI革命
(3) 少子高齢化
(4) 地球環境破壊
といった経営環境変化があります。
これらの環境変化は突然現れる訳ではないので「ぬるま湯につかったカエル状態」から脱せられず衰退してしまうリスクが存在します。
しかし、今回のコロナショックはいわば熱湯を浴びせられたカエル状態であり、環境変化に対応するため事業構造の抜本的見直し、転換を余儀なくされています。
この意味では経営トップが指揮官先頭でぬるま湯から飛び出す絶好のチャンスとなります。
共通要因②:事業の独自性と従業員の結束力
2つ目は「事業の独自性と従業員の結束力がある」です。
事業の独自性は、理想的には自社の強みを磨き、他社では提供できないオンリーワン・ナンバーワンの製品・サービスを提供する事業を営んでいる企業です。
日本には中堅企業でいわゆる「選択と集中」で事業の独自性を持っている企業は数多く存在します。
これらの企業の繁栄は、経営トップのリーダーシップに依る所が大きいですが、社員一人ひとりが自社の事業の独自性に自信と誇りを持ち、社員同士が困った時はお互い様と助け合う社風があります。
また、ミドルマネジメント層が次世代により良い会社を残したいという熱量が高く、結果として結束力も高いです。
共通要因③:分散的な経営
3つ目は「分散的に経営され自由度がある」です。
日本の中堅中小企業が抱えている重要な経営課題の一つは事業承継問題です。
これらの会社はトップにリーダーシップがあり、立派な業績を残している会社も多いです。
しかし、トップが優秀で全権を集中しているが故に従業員が指示待ち人間になっているケースも多く見受けられます。
経営はゴールの無い駅伝レースであり、次に経営をバトンタッチする人材を育てておく必要があります。
「分散的に経営され自由度がある」
会社は経営を担当する人材が育つしくみを具備しています。
共通要因④:保守的な財務
4つ目が「財務は保守的である」です。
絶えず自らの本業は何かを考え、本業には金を使うが本業以外には徹底して金を惜しむということです。
トヨタの中興の祖といわれた石田退三氏は「自分の城は自分で守れ」が経営哲学でした。
ケチケチ精神で金を貯め、工場と設備に投資を行いました。
この精神は、現在の豊田章男社長にまで連々と受け継がれており、CASE時代に突中した現在、トヨタは富士の裾野の広大な工場跡地にスマート・シティ(ウーブンシティ)を建設中です。
EV(電気自動車)、自動運転など自動車の環境変化を先取りしこれから前代未聞の実験を始めようとしています。
今回のコロナショックでもビクともしない中堅中小企業は、財務が保守的で潤沢な資金を保有している企業です。
「治にいて乱を忘れず」と言っていた、松下幸之助翁が残した「ダム経営」を日頃から心掛けなければなりません。
現在経済産業省は、コロナショックを乗り越える中堅中小企業の為に「事業再構築補助金」を準備しています。
この制度も視野に入れて、CX(コーポレート・トランスフォーメーション)にチャレンジし、平成以降最大(と筆者は思う)の環境変化を乗り切り、更に強く且つ社員にとって働きがいのある会社となって頂きたいです。
筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士 丸山 弘昭
- 数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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