筆者は社員の有志と一緒に毎月2回、始業前に1時間読書会を行っています。
読書会で扱う本は経営に関する名著です。
最近はジェームズ・C・コリンズの「ビジョナリーカンパニー2・飛躍の法則」を扱っており、筆者を含め社員が多くの気付きを得ました。
原題は“good to great”であり、普通の良い企業が偉大な企業へと発展した法則を、コリンズを中心とした研究チームが1万5千時間の調査の結果、導き出したものです。
以下に、コリンズと研究チームが導きだした法則を紹介します。
偉大な企業へと発展する第一の法則:リーダーの存在
第一はコリンズが第五水準の経営者と定義したリーダーの存在です。
一般に有能な経営者は、明確で説得力のあるビジョンを掲げ、ビジョンの実現に向けて、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与え、強いリーダーシップを発揮する人物(第四水準の経営者)をイメージします。
しかしコリンズは、飛躍した企業の経営者はそうではなかったと言います。
個人としての謙虚さと職業人としての意思の強さ(不屈の精神)という矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げるリーダー・経営者(第五水準の経営者)でした。
コリンズは代表例としてピューレット・パッカードを創業した、ヒューレットとパッカードを挙げています。
日本でも松下幸之助は、経営者は謙虚でなければならいと常に語っていました。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということだと思います。
偉大な企業へと発展する第二の法則:最初に人、その後に目標
第二は飛躍した企業は最初に人を選び、その後に目標を選んでいるという点です。
コリンズはこのことを「誰をバスに乗せるか」と表現しています。
最初に適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろす。
適切な人がそれぞれに相応しい席に座ってからどこへ向かうかを決めていると言います。適切な人材こそがもっとも重要な資産ということです。
今は人口減少社会にあって働き手がどんどん減ってくる時代です。
我々は何をする会社であるか(ビジョン)を明確にし、その下に集まった人財を教育し、全員参加で仕事に取り組む会社でなければ存続と成長は難しいでしょう。
偉大な企業へと発展する第三の法則:現実の直視
第三は厳しい現実を直視する点です。
飛躍した企業のリーダーはどんな困難にぶつかろうとも最後にはかならず勝てるし勝つのだという確信を持っています。
経営の神様、松下幸之助が語った事業観に「成功の要諦は成功するまでやり続けることである」という言葉があります。
経営者には、このような不撓不屈の姿勢と信念と持続力が必要であるということです。
偉大な企業へと発展する第四の法則:単純明快な戦略
第四は飛躍した企業は単純明快な戦略を持っている点です。
コリンズは飛躍した企業は
(1) 情熱を持って取り組めるもの
(2) 経済的原動力になるもの
(3) 自分が世界一になれる部分
という三つの円が重なり合った所に事業の焦点を絞っていると述べています。
コリンズは三つの円を素早く理解するには企業についてではなく、自分の仕事について考えてみる良いと言っています。
(1)は持って生まれた能力にぴったりの仕事であり、その能力を活かして、おそらくは世界でも有数の力を発揮できるようになる(自分はこの仕事をするために生まれてきたのだと思える)。
(2)その仕事で十分な報酬が得られる(これをやってこんなにお金が入るなんて、夢のようだと思える)。
(3)自分の仕事に情熱を持っており、仕事が好きでたまらず仕事をやっていること自体が楽しい(毎朝眼が覚めて仕事に出掛けるのが楽しく、自分の仕事に誇りを持っている)。
自社のビジョンは明確か?
筆者は、この三つの内に重なる部分が正に「天職」であると思います。
企業として掲げるビジョンが明確で、社員一人ひとりが「天職」意識を持った企業は発展する、ということです。
本田宗一郎の名言に「得手に帆を上げよ」があります。
企業も個人も天職意識を持ち、好きなこと得意なことに取り組み、結果として経済的な満足が得られることが理想だと思います。
第四次産業革命の到来で時代の変化について行けなくなるのではないか、AIに仕事が奪われるのではないか、と言われる先の見通しのきかない時代です。
こんな時こそ経営者は長期的、多面的、根本的に自社の将来を見据え、ビジョンと戦略と組織づくりを考え直すことが必要ではないでしょうか。
コリンズの飛躍の法則がそのヒントになれば幸いです
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筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士 丸山 弘昭
- 数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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