AIの民主化にどう向き合うか

経営

2023年あたりから、ちらほらと“AIの民主化”という言葉が日経新聞のニュース等でも使われるようになってきました。

とはいえ、AIは急速な拡大を見せているものの、まだ推進の初期段階であり、民主化というよりは、大企業とそれ以外の間でより大きな格差が生まれつつある状況に見えます。

一方、当社の丸山もメルマガでお伝えしていた通り、「中堅中小企業こそAIを導入すべき」なのは明らかです。

▼生成AIで社会が変わる、変化の時こそチャンス(丸山 弘昭)

AIの定義が曖昧になっている

そもそも「AI」という言葉がどう捉えられているか、という問題ですが、皆さんの認識ではいかがでしょうか。

筆者の印象では、過去も現在もかなり曖昧な使われ方をしているように思います。

少し前の認識ではAIという言語は人工知能(Artificial Intelligence)を指すものとして使われていたように思います。

「人間の知能や行動を再現したもの」といったイメージですね。

筆者もGoogleトレンドで検索してみましたが、2015年あたりから「ビッグデータ」に併せて「人工知能」というキーワードが国内で盛り上がりを見せていました。

その後、2019年あたりから「機械学習」「ディープラーニング」といった「AI」に隣接するキーワードに対する関心がそれらを上回り、現在に至っているようです。

AIブームの牽引役「ChatGPT」とは?

そして、なんといっても現在のAIブームの牽引役は生成AIであるChatGPTです。

使ってみた方はご存知でしょうが、GPT-4といういわゆる大規模言語モデル(LLM:Large language Models)を利用したアプリケーションのひとつです。

基本的にはユーザーが入力する文字に対して、過去に人類が入力・公開した文字列の中から類似度の高い多数の文章を読み込んで学習し、自然言語理解、文章生成、質問応答などのタスクを予測・実行することができます。

結局のところ、これらはあくまで「機械学習モデル」のひとつの話であり、あくまでAIの本来の意味である「人間の知能や行動を再現」する手前の存在であると考えるのが正しいようです。

とはいえ、現状メディアでの使用状況はAI=機械学習と捉えられているようですので、その前提でお話を進めましょう。

AIにできること

つまるところ、AI(機械学習)ができることは過去の大規模データを背景にその回答を「予測する」ということが中心になります。

「予測」はあらゆる場面でビジネス上の価値を生むため、例えば身近なところでは、自動運転や医療分野での画像診断等などが有名ですが、他にも下記のようなビジネスが生まれています。

■AI需要予測サービス「サキミル」
人流統計データ・気象データを活用した来店客予測により、食品ロス削減や業務の最適化に寄与
 

■対話型AI面接サービス「ShaiN」
松屋フーズホールディングス店長昇格試験に「ShaiN」を導入
 

■マンガの高速な多言語展開を可能にする法人向けクラウドサービス「Mantra Engine」
マンガ専用の多言語翻訳システム「Mantra Engine」をリリース

様々なジャンルで広く推進されていますが、いざ自分の所でやってみようと思ったとしても、キー人材であるデータサイエンティストはかなりの人手不足のようです。

データサイエンティストは希少な存在

そもそも「データサイエンティスト」は、①プログラミングの理解 ②数学や統計学、アルゴリズムの理解 があり、加えて ③携わるビジネスの理解 が求められますが、この3つを揃えた人材というのはかなり希少な存在になってしまうことが想像できるかと思います。

非データサイエンティスト向けのプラットホーム

そこで出てくるのが冒頭の「AIの民主化」というキーワードです。

既にChatGPTやDataRobotのような、AIを扱う敷居を下げてくれる数々のプラットフォームが存在しています。

特に、DataRobotなどは過去データから予測可能なモデルの生成を自動化するのみならず、入力データの準備や実運用後のモデルの監視や管理までを自動化するAutoMLです。

少し使用するだけでも非データサイエンティストでも利用可能な環境が揃ってきていることがわかると思います。

筆者もChatGPTやDataRobotを使い始めましたが、それなりの学習は前提となるものの、プログラミングや統計学を身につけるよりは、かなり敷居が下がっていることが実感できています。

AIにできないこと

そして使えば使うほどわかってくるのが、結局のところ読者の皆様のような「事業を理解しているドメイン人材」が最も重要であるということです。

日本を代表するデータサイエンティストであるシバタアキラ氏によれば、「事業内容を深く知っている人ほど、その中で取得されている、または取得可能となるデータに関しては土地勘を持っている」からです。

機械学習は奥の深い技術ですが、こと使用するにあたってAIの「開発」自体ができる必要はありません。

スマホが「使える」ことと「製造する」ことが同列でないのと同じです。

これからはもっと「使用する」ということに対し事業理解の豊富な「ドメイン人材」側からどんどん敷居を下げていけばよいのです。

最後に

誰もがAIを使える世界が始まりました。

当社でもセミナーを企画中ですので、また詳細が決まり次第HPからお知らせしたいと思います。

アタックスでは最新の情報を提供しています。

ご相談事がございましたら、こちらまでご連絡ください。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング取締役 税理士 浦井 耕
TFP(現山田)コンサルティンググループ、中小会計事務所を経て株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングへ入社。ハンズオンによる管理制度構築支援や多数の企業再生支援に従事。2011年の東日本大震災以降は特に宮城県内の被災企業の再生支援を多く手掛ける。
浦井 耕の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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