2024年7月に総務省から「令和6年版情報通信白書」が公表されました。
今回は、この中でもデジタルテクノロジーの動向を中心に触れていきます。
参考:総務省HPより
近年のデジタルテクノロジーの進化
近年のAIをはじめとするデジタルテクノロジーの進化は著しいものです。
2022年にサービス公開された「ChatGPT」をはじめとする生成AIはその進化の飛躍的な例と言えます。
デジタルテクノロジーは、広告やマーケティング、コンテンツ制作をはじめ様々なビジネスにおいて変革をもたらしており、スマートスピーカーやチャットボットも以前より生活の中に浸透してきました。
今後においても、AIそのものの進化、さらにAIとロボティクス等、他の技術・サービスと組み合わさることにより、産業から社会・経済活動と多岐にわたる一層の発展が期待されています。
デジタルテクノロジーの進化がもたらすリスクや課題
しかしながら、この急激な進化の一方で、例えば次のようなリスクや課題にも直面しています。
- プライバシー侵害やデータの流出
- 偽・誤情報の流通・拡散
- 一部のビッグテック企業へのデータ集中化の加速
現在、世界では規制・ルールの議論が進められているところですが、もはやAIや新しい情報技術を活用しないこと自体をリスクとして捉えられていることに着目したいです。
日本のAI導入の現状
情報通信白書内において、AIを含むデジタルテクノロジーの利用状況等のアンケート調査結果が公表されていますが、日本の活用状況が他国と比較して低調であることが特徴的でした。
参考
- 個人で、生成AIを使っている(過去使ったことがある)と回答した割合
- 企業で、生成AIを活用する方針を定めていると回答した割合
- 企業で、業務において生成AIを活用していると回答した割合(メールや議事録、資料作成等の補助)
→日本9.1%(ドイツは約3割、英国は約4割、米国・中国は約5割)
→日本42.7%(米国・ドイツ・中国は約8割以上)
→日本46.8%(米国、ドイツ、中国は約7割以上)
デジタルテクノロジーは、産業の競争力を強化し、社会課題を解決するためもはや不可欠な要素となっています。
情報通信白書においても、「デジタルテクノロジーと共に生きていく」ことを目指しています。
これは、2024年4月に総務省・経済産業省が策定した「AI事業者ガイドライン」の次に通ずるところがあると考えられます。
リスクを認識し、リスクの許容性及び便益とのバランスを検討したうえで、積極的にAIの開発・提供・利用を行うことを通じて、競争力の強化、価値の創出、ひいてはイノベーションに繋げることが期待される
参考:経済産業省HPより
今後の私たちに求められるAIに対する姿勢
それでは、今後は、個人、企業としてどのような姿勢が求められるのでしょうか?
「研究開発領域に限らず、ビジネスにおいて生成AI活用による変革を推進するためには、経営層が投資判断などの意思決定を適切に行うための基礎知識が必要」との意見があり、そうでなければ、多額の投資失敗に成りかねない、との指摘もあります。
基礎知識として次が挙げられていますが、単なる技術の知識のみならず、何を解決したいのかと思考する力、さらにまずは試してみる、という挑戦する姿勢を絶えず惜しまないことが重要ではないでしょうか。
- 環境変化をいとわず主体的に学び続けるマインド・スタンスや倫理、知識の体系的理解等のデジタルリテラシー
- 指示(プロンプト)の習熟、言語化の能力、対話力
- 経験を通じて培われる「問いを立てる力」「仮説を立てる力・検証する力」
現時点において、直接的に日常生活・業務の現場でおいて、期待する効果が現れない、という技術も今後、飛躍的に向上して、想像しない進化を遂げる可能性を十分に秘めているのが、デジタルテクノロジーだと考えられます。
付随するリスクも含めて、今後の動向に着目しながら、活用、試用する機会を増やしてみませんか。
【過去記事紹介】
ChatGPTの登場で何が変わるのか!~その活用法とAI技術の可能性(2023.07.14公開)
筆者紹介
- 株式会社アタックス・エッジ・コンサルティング 取締役 公認会計士 新川 真代
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティングにて中堅中小企業向けに企業再生・経営支援等の経営コンサルティングを従事。現在は、株式会社アタックス・エッジ・コンサルティングにて会計専門家としての知見・経験を生かしながら、会計専門家の業務効率化・中堅中小企業の経営に資する情報提供のためのシステムを開発・運用に取り組んでいる。
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