2020年版「中小企業白書」の興味深い“%”~アフターコロナに考えるべき経営課題

経営

2020年版の「中小企業白書」が中小企業庁から発表されました。

今年度の中小企業白書では、新型コロナウイルスに関する中小企業への初期影響をはじめ、令和の時代を中小企業が生き抜くうえでのポイントが解説されています。

本コラムでは、中小企業白書および筆者の現場支援を通じて感じる、中堅中小企業がアフターコロナに向けて今こそ取り組むべき、2つのテーマを解説致します。

①お客様・社員とのコミュニケーション変化への対応

「13%」

これは、新型コロナウイルス流行前の資本金1億円未満の企業のテレワーク導入状況です。
(資本金1億円以上の企業が34%)

同じ基準の直近の統計情報は発表されていませんが、飛躍的にテレワークの比率が上昇していることは言うまでもありません。

なお、同調査時点におけるテレワーク導入の目的は
生産性向上56.1%
移動時間圧縮48.5%
となっており、「非常時の事業継続対策」は15.1%と非常に限定的なものでした。

テレワークが仕事の生産性に与える是非は、測りかねるところですが、アフターコロナ後も、一つの働き方として定着することは間違いありません。

しかし、それ以上に、お客様・社員とのコミュニケーションの取り方が継続的に変化する可能性を強く感じています。

この1ヶ月程、普段ご支援している中堅中小企業においても、以下のような変化が実例として起こっています。

・全体朝礼をGoogle Meet(ビデオ会議)で同時に60人つないでライブで実施するようになった
・経営方針発表会を部門毎に短時間の動画として録画し、MicrosoftTeams(掲示板・ビデオ会議)で好きなタイミングで社員が見る形式に変えた
・経営会議や顧客ミーティングをZoom(ビデオ会議)で資料の画面共有機能やホワイトボード機能を使って実施するようになった
・新型コロナ対応に対する意見収集、テレワークでの課題収集等を、LINEWORKS(LINEのビジネス版)を活用して50人一元的に行った

更に、経営者や幹部から、今後も十分これでやれる、対外的な活用も含めあらゆる場面で活用していける、という声を多くお聞きしています。

新型コロナウイルスへの対応策を通して、コミュニケーション手法に関して「当たり前」の水準が明らかに変化しています。

上記の例も、大企業ではなく、売上数億円の企業や、業歴50年を超える老舗企業で起こっていることに驚きを感じます。

1年程前にテレワークやWebミーティングの情報提供をさせていただいていた際に、「うちは製造業だし、年配社員が多いから難しい」というお話をされていた企業でも変化が起きているのです。

組織に変化をもたらすには非常にパワーがかかります。特に、「やった方がいい」という類の取組みはなかなか前に進みません。

今であれば、緊急対応の延長線上で、「やらなければならない」という認識が生まれ、抵抗なく動けるはずです。

まだ取組みが十分でない会社は、テレワークまでいかなくとも、新しいコミュニケーションの常識に今こそチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

②BCP(事業継続計画)及び経営計画の運用体制の整備

「12%」

これは、中小企業のうちBCPを策定している企業の比率です。
大企業でも策定している企業の比率は29%に留まります。

BCPで想定しているリスクTOP3の内訳をみると、
1位 自然災害が70%
2位 設備故障42%
3位 火災・爆発事故34%
となっています。

感染症リスクと回答している企業は23%に留まっています。

この結果からも、ほとんどの企業が感染拡大に伴って、慌てて、対策を講じる状況であったことが伺われます。

アフターコロナの世界は「ウイルスとの共存・共生」というキーワードをニュースや経営者の方々からお聞きします。

社員の危機意識も高まっている今、自然災害や事故等も含めてより総合的にリスクを踏まえた、本質的なBCP策定をすべきタイミングではないでしょうか?

そしてもう一つ数字を紹介したいと思います。

「50%」

経営計画を十分に認識して運用している企業のうち、経常利益が増加している企業の比率です。

経営計画の認識が十分でない企業の同指標は、約30%に留まっており大きな差が見られます。

つまり、経営計画の運用がしっかりしている会社の方が、業績が良いということです。

経営計画は、新型コロナウイルスに関わらず、変化の激しい時代を生き抜くための羅針盤であり、特に「会社を潰さない(企業の永続)」ために、企業にとって必須のツールです。

経営計画と聞くと「どうせ絵に描いた餅でしょ」という言葉が返ってくることがあります。

しかし、企業存続のリスクに敏感になっている今だからこそ、BCPとともに会社を守り、更なる成長していくための経営計画についても経営幹部・社員の方々と策定するべきだと思います。

アタックスグループでは、ファイブステップ(調査分析→問題発見→課題整理→改革提案→実行支援)コンサルとして中堅中小企業の経営改善に関する様々なお悩みに対し、現状分析から課題解決のためのご支援を行っています。
こちらからお気軽にご相談ください。
 

中期経営計画策定

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役
中小企業診断士 平井 啓介
業務系システムを扱う大手システムベンダーを経てアタックス入社。 システムエンジニア時代は、会計システムを中心に、中堅中小企業~上場企業まで業種を問わず、約60社の業務改革を支援。システム企画~導入・運用支援まで、プロジェクトマネジメントのみならず、現場の実態を理解したうえでのサポートを得意とする。アタックス参画後は、システムエンジニア時代に得たITスキル、ロジカルシンキングスキルを応用し、業績管理制度構築サポート、業務プロセス改革サポート(BPR)、事業再生サポートに従事。経営者、管理部門責任者の相談相手に注力している。
平井啓介の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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