経営者との面談で、最近特に多い相談が人材採用についてです。新人・中途ともに採用が難しくなっています。 採用支援会社の提案で給与水準・勤務条件などを見直し、採用活動を行ってもうまくいかないのが実情です。やはり優秀な人材から大手企業に就職してしまい、中堅企業にはなかなか就職していただけない。 少子化社会の進展により採用環境が年毎に厳しくなっています。経営者が人材の採用・育成・定着という戦略を真剣に考えないと、資金難ではなく、人材難で会社が存続できなくなる時代です。
筆者は中堅企業の人材戦略は「働きがいのある会社」づくりにあると思います。「働きがいのある会社」とは、長期的に考えて、外に対しては「社会に貢献できるお役立ち企業」であり、内に対しては「社員の成長と幸せを実現してくれる社員満足第一企業」です。
ところで1991年米国で設立されたGreat Place to Work(以下GPTW)という組織があります。 この組織は、社員にとって「働きがいのある会社」をアンケート調査し、その結果を公表することで、「働きがいのある会社」の普及と実現を支援することを目的としています。 日本でも2005年からGPTW Institute Japanが活動を始めています。
GPTWが定義している「働きがいのある会社」は、我々会社経営者にとっても大変参考になると思いますので解説します。 「働きがいのある会社」を構成する要素は3つです。従業員を中心に頭の中に3角形の図をイメージしてください。
1つ目は仕事との関係性で、keywordは「誇り」です。
自分が行っている仕事に誇りがもてるかどうかです。社員が胸を張って「自分達の仕事は世の中の役に立っている」と思える仕事であり、お客様から「ありがとう」と喜んでお金を支払って頂けるのが理想です。
2つ目は一緒に働く仲間との関係性で、keywordは「連帯感」です。
仕事は遊びではないので厳しい状況に追い込まれることも当然あると思います。こんな時一緒に働いている仲間と協力して仕事ができる、連帯感の持てる職場であれば苦しさも我慢できるはずです。あるいは仲間同士が切磋琢磨(せっさたくま)して向上する職場は、「働きがいのある会社」と言って良いと思います。
3つ目はマネジメント層との関係性です。keywordは「信頼」です。
社員が、勤務している会社や経営陣のことを信頼できる会社は、「働きがいのある会社」であると思います。「信頼」は「信用」「尊敬」「公正」という要素に分解することができます。私の体験では、従業員が自分の会社の社長を信頼して自慢する会社は間違いなく「働きがいのある」良い会社です。
要約すると、GPTWが定義する「働きがいのある会社」とは「従業員が自社の事業と自分の仕事に誇りを持ち、共に働く仲間と連帯感が持て、経営者、管理者を信頼している会社」ということです。
上で述べてきたように、長期的視点に立って、物心両面で「働きがいのある会社」になることが企業存続の基本条件であると私は考えています。
安倍首相は本国会の所信表明演説で「働き方改革」を打ち出しています。これを受けて、経営者が「働き方改革」に取り組むことは重要な経営課題となっていますが、その際に、是非「働きがいのある会社」になることを意識して取り組んでいただきたいと思います。
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筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士 丸山 弘昭
- 数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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