上場を希望する企業は、まず、会計監査の受託先の確保を最優先!

経営

あずさ監査法人より2017年上半期のIPO動向が公表されました。当該レポートによりますと、2016年1月から6月の新規上場数が40社に対して、2017年の同期の新規上場数が39社と増加ではなく、わずかに減少しています。

上場する会社は、直前2期の決算書について、監査法人による会計監査を受ける必要があります。この新規上場会社の会計監査を、監査法人が容易に受託できなくなっていることが予想されるのです。

最近、よく上場のご相談を受けるようになりました。私はこの肌感覚から、上場を目指している企業は決して減っておらず、むしろ増えているのではないか、と思っています。

ところで、上場となれば、上に述べたように会計監査が必要となるため、監査法人に相談に行きます。その際、監査法人の担当者はなかなかいい返事をしてくれないのです。 東芝やその他の会社の不祥事で、監査の質を高めるため、監査法人サイドも監査手続きを増やしてきているようです。ということは、現場も会計士もやらねばならない仕事が増えているわけです。

一方、世間ではQOL(Quality of Life)の観点から働き方改革が叫ばれ、残業圧縮が非常に重要な問題となっています。当然、会計士の業界も同じで、残業圧縮が極めて重要な経営課題となっています。 監査をより厳正にするために既存のクライアントへの作業量が増える一方で、残業時間を減らさないといけないとなると、当然、新規上場のための監査を受注する余裕はなくなっていきます。

大手がだめなら、準大手があるのではないかと思われるかもしれません。しかし、この問題は準大手も同じです。会計監査の世界は、大手の監査法人でも中小の監査法人でも、実施する手続きは同じです。したがって、中小監査法人も同じ悩みを抱えていることは容易に想像されます。

今後、会計監査が受けられないために上場準備に入れない会社が続出することが懸念されます。 特に、オリンピックを意識して早く上場をさせたいと思っておられる企業は、早期かつ相当入念に監査法人と話をし、会計監査プロセスを円滑に進めるようにせねばなりません。 そのためには、監査法人の監査を受ける前に、いかに適切な事前準備ができるか、が重要なポイントになります。

通常、監査法人は、会計監査の契約を締結する前に、予備調査というものを実施し、上場に際して問題となる点を明確にします。その予備調査をうけてから、内部体制を強化していくのが一般的な流れです。

しかし、私は、上に述べたような昨今の状況では、このペースでは上場できる日が相当遅くなってしまうのではないか、と感じています。

予備調査を受ける段階で、大きな問題点はすでにクリアになっており、会計監査がしやすい状況を作り上げておく。こうすることで、監査法人の予備調査負担が軽減され、会計監査をスムーズに受けることができると考えています。

アタックスでは、上場の専門家が会計士の監査に耐え得る内部統制や経理体制強化のためのサポートをさせて頂いています。上場を検討されている企業はぜひご相談ください。ご相談フォーム

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 林 公一
1987年 横浜市立大学卒。KPMG NewYork、KPMG Corporate Finance株式会社を経て、アタックスに参画。KPMG勤務時代には、年間20社程度の日系米国子会社の監査を担当、また、数多くの事業評価、株式公開業務、M&A業務に携わる。現在は、過去の経験を活かしながら、中堅中小企業のよき相談相手として、事業承継や後継者・幹部社員育成のサポートに注力。
林公一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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