私は、主に企業再生に関するコンサルティングの現場で、経営計画の策定をご支援しています。
経営計画策定の手順については、昨年、「今さら人に聞けない事業計画策定の手順とは!~戦略のない計画は画餅」というテーマで解説させていただきました。
今回は、策定した経営計画を絵に描いた餅に終わらせないための、PDCAの推進に関して解説したいと思います。
経営計画を絵に描いた餅に終わる要因
せっかく策定した経営計画が絵に描いた餅に終わってしまう要因、つまり計画が思うように実行されない要因としては、何があるでしょうか?
まず1つ目は、経営計画の「策定段階」に起因する問題です。
こちらは、昨年の記事でも解説させていただきましたが、下記の要因が考えられます。
経営計画の策定にあたり戦略が十分に検討されていない
具体的な戦略の無い数字だけが独り歩きした計画は達成するための方策が不透明となり、絵に描いた餅に終わってしまう可能性が高くなります。
計画に魂が込められていない
自分たちの計画であると意識して、絶対達成するんだという気概を持って計画を策定する必要があります。また、経営計画の策定にあたっては、経営陣だけでなく、現場のキーマンも巻き込むことも重要になります。
詳細は、昨年の記事を参照ください。
PDCAが適切に推進されない要因
そして、計画が絵に描いた餅になる2つ目の要因としては、経営計画の「実行段階」においてPDCAが正しく推進されていないことが挙げられます。
計画で置いた仮説を検証するという意識が希薄である
経営計画を策定する際には、戦略を実現するために、より詳細に誰がいつまでに何をすべきかまで明確にしたアクションプランを策定します。
計画実行段階では、このアクションプランを実行することにより、戦略が実現され、経営計画で掲げた目標達成を目指します。
つまり、経営計画を絵に描いた餅に終わらせないためには、このアクションプランを着実に実行する必要があります。
仮説の検証の重要性
計画を策定する際には、外部環境や内部環境を調査した上で、一定の仮説を置いたうえで戦略を立案しています。
そのため、計画実行段階では、計画で策定したアクションプランを実行するとともに、その効果を検証することで、計画策定時に置いた仮説が正しかったのかどうかを判断し、軌道修正しなければなりません。
しかし、このアクションプランの効果検証(仮説の検証)が実行されていないケースが、往々にして発生しています。
その大きな要因は、経営陣から従業員へ経営計画が発表され、各現場でアクションプランを実行するよう指示はなされますが、その後のフォローが不足していることです。
PDCAにより仮説の置き直しも視野に
経営計画で立案した売上高や利益などの財務数値の達成度合いばかりに目がいき、計画策定時に検討した仮説が正しかったのかどうかを検証するという視点が抜けていることがあります。
経営計画を絵に描いた餅に終わらせないためには、アクションプランを着実に実行し(D)、その結果を検証し(C)、検証結果に応じたアクションプランの見直し(A)を実施する必要があります。
このPDCAサイクルを通して、計画策定時に置いた仮説が正しかったかどうかを検証し、誤っていれば仮説を置きなおし、新たな戦略やアクションプランを検討することを意識することが重要です。
アクションプランが現場で実行されていない
また、経営陣や幹部社員が指示したアクションプランが、そもそも現場で実行されていないケースもあります。
現場社員は、日々の業務に追われており、なかなか新たなアクションプランの実行まで手が回らないことが多いからです。
したがって、経営計画の内容説明を通して、アクションプラン実行の重要性を認識させるとともに、経営陣や幹部社員自らが、現場でアクションプランが推進されているかどうかをしっかりと確認することが重要です。
その際には、以下の視点を意識することが重要です。
- 現場社員は日々に業務に追われているため、細かくフォローしないとアクションプランの実行は後回しになります。
- 現場社員は日々に業務に追われているため、多くのアクションプランをやりきることは出来ません。出来るだけやることを絞り単純化する必要があります。
- やると決めたことは、結果が出るまでやりきることが必要です。中途半端なままでフォローを終わらせてしまうと、現場社員もやりきる意識が欠如し、実行が中途半端になります。
- アクションプラン実行後の検証結果は、現場社員へもフィードバックする必要があります。
現場社員へフィードバックがなされないと、現場社員がアクションプランの有効性について把握できないため、実行に対するモチベーションが低下してしまいます。
今回のコラムでは、計画を絵に描いた餅に終わらせないためのPDCAの重要性について解説しました。
弊社では、経営計画策定のサポートにとどまらず、経営計画の実行推進のサポートにも力を入れています。いつでもこちらのお問合せフォームからご相談ください。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員
中小企業診断士 辻 裕之 - 銀行系システム会社、NRIデータサービス(現野村総合研究所)を経て、アタックスに参画。中堅中小企業を中心に、企業再生、M&Aサポート、計画経営推進、管理体制整備、経営顧問業務など幅広い業務にあたるオールラウンダーなプロジェクトマネージャーとして活躍中。
- 辻 裕之の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。