様々な物の価格が高騰!
最近は、様々なクライアントから仕入価格が上昇したという話をお聞きします。
原油価格については、代表的な指標のひとつであるWTI(West Texas Intermediate)先物3月限が本コラムを執筆している2月7日終値で1バレル91.32ドルとなっています。
2020年の初頭は1バレル20ドル前後まで落ちた時もあったため、その時と比較すると4倍以上になっています。今後もウクライナ情勢等の問題もあり、更に上昇するリスクがささやかれています。
そのほかにも、急激な経済活動の再開や労働者確保難による需給のひっ迫、世界的な金融緩和に伴うカネ余りから鋼材や食料品、海上輸送コスト、石油化学製品等様々な物の価格が高騰しており、経営者の方々の頭を悩ませています。
今後、コスト削減で賄えるのか?
価格の上昇によるコスト増加をコスト削減で賄えれば問題ないのですが、これだけ急激にものの値段が上がるとそれだけでは賄えないケースが大半です。
早晩、販売価格への転嫁が不可欠になると思います。特に中小企業は大企業と比較して財務体質が脆弱であり、価格競争を続けていけば明らかに勝ち目はありません。
そのため、価格面以外できちんと自社の価値を認めてくれる会社を見極め、そのような相手先をターゲット顧客としてビジネスを行っていくという考え方が必要となります。
筆者は、仕入価格の上昇によって窮境に陥っている企業の経営改善策について、以下のようなステップを提案しています。
経営改善策の4つのステップ
ステップ① 社内のコストの徹底的な削減
まずは、現在製造・販売している商品やサービスを生み出すのにかかっているコストが適切なのか分析をします。
製造業であれば不稼働の資産はないか、直間比率は適正か、不良や歩留まりに改善余地はないか、事業に関係のない支出はないか等を調べながら最低限のコストで事業運営がなされているかを確認します。
ステップ② セグメント別売上総利益を見て、不採算な取引の明確化
次に、セグメント(取引先・商品等)別の売上総利益を明確にし、販売管理費、支払利息及び会社の必要利益を賄えていない取引先や商品を明確にします。
ステップ③ 販売価格引き上げの交渉
不採算なセグメントが明確になったら、その取引先や商品の値上げを交渉します。
その時には上記②で算出した損益結果を添えて、ロジカルに不採算であることを説明します。
そこまでしても値上げを受け入れてくれない取引先があれば、本当にその先は当社にとってのターゲット顧客なのか考え、その先との取引を中止することを検討します。
ステップ④ 価値を認めてくれる先への営業強化、又は生産能力の減少
上記③により売上が減少する場合は、当社の価値を認めてくれる先への営業強化、又は、売上の減少に見合った生産能力の減少を検討します。
不採算な先で値上げを受けてもらえない先について取引を停止するのであれば、その分生産能力に余剰が生じます。そのため、
- 当社の価値を認めてくれる先との取引を増やす
- 生産量減少によって生じた余剰生産能力の削減
のいずれかによって、生産に必要な最低限のコストや必要利益をきちんと販売価格で回収できる体制を構築します。
今こそ見極めるタイミング
本来、財やサービスを提供するのにかかるコストを販売価格で回収しなければ商売とは言えません。そして、適切なコストを負担してくれる顧客とだけ商売をしないと黒字は出せません。
適切なコストを負担してくれない顧客はそもそも当社のターゲット顧客ではないと考えるべきです。
この多様な物の価格の高騰のタイミングは、現在の顧客が自社の価値をきちんと認めてくれる顧客なのか見極めることができるタイミングだと思います。
現実を直視することは非常につらいことですが、対応が遅れれば最悪の結末を迎えざるを得ないこともありえます。
現在仕入価格の高騰で悩んでいる企業がやるべきことは、きちんと値上げ交渉を行うことです。そして、本当にいまの顧客は自社のターゲット顧客(価格以外の面できちんと当社の価値を認めてくれている顧客)なのか、真剣に検討することが大切です。
筆者紹介
- 株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 中小企業診断士 伊原 和也
- 1996年 武蔵大学卒。大手ノンバンクを経てアタックス入社。中堅中小企業を中心に企業再生支援、M&A支援、中期経営計画策定支援および株式公開支援等を中心にプロジェクトマネージャーとして活躍中。
- 伊原和也の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。