人事制度とはそもそも何なのか?
私は評価制度や報酬制度、いわゆる人事制度構築のご支援をするコンサルタントです。
お客様との会話で、「人事制度とはそもそも何なのか」という質問を良く受けますが、人事制度とは非常に幅の広い概念であり、回答が難しいと常々思っています。
大企業では「人事異動の仕組み」として認識している方が多いように感じますし、中堅中小企業では「給与を上げる仕組み」ととらえている方が多いと思われます。
どれも間違いではありません。人それぞれの定義があるのです。
それでも「一言でまとめるなら?」と質問を頂くこともあります。
そうした際は、「乱暴なまとめ表現ではありますが」と前置きした上で、「人事制度とは仕事へのモチベーションを高めるための仕組みです」と回答しています。
ただ、正しく伝わっていないかもしれないと感じることもあります。
原因は、モチベーションという言葉自体があいまいな表現だからです。
動機付けの具体的な対象があるのが「モチベーション」
Web辞書等でモチベーションを検索すると、主に「やる気」「動機」といった定義が散見されます。
しかし、語源に遡ると「動機」の側面のみに限られるようで、モチベーションという言葉は本質的に動機づける“対象”があることを表しています。
つまり、
- 仕事へのモチベーション(動機)が高い
- 休日の旅行へのモチベーションが高い
- 経営者として成功して社会貢献することへのモチベーションが高い
のように、「モチベーション」は、動機付けの対象(仕事、旅行、社会貢献すること)とセットで表現される言葉なのです。
しかし、モチベーションの言葉が使われる多くの場面では、以下の表現が多いように感じます。
「今日、モチベーション上がらないなー」
「私って、モチベ(モチベーションのこと)が不足しているからさー」
あたかも、体調や性格・素質のようにモチベーションをとらえる“対象の無い”表現です。
今の日本では、人間としての情熱や積極性など意識の高さとして「モチベーション」が使われ、漠然とした、曖昧模糊なイメージが浸透しているのではないでしょうか。
そして、問題なのは、「モチベーションが高まる=社員満足度(意識)が高まる」と難しく受け止められ、モチベーションアップのハードルが高まっていることです。
繰り返しますが、本来のモチベーションアップは、対象がある動機付けです。
仕事へのモチベーションをブレイクダウンして考えれば糸口は見えてくるはずです。
些細な動機であってもモチベーションなのです。
「些細な動機(モチベーション)」の具体的な例
先日、ある会社の管理職クラスの方々向けに、問題解決や、コミュニケーションに関する研修を行いました。
その参加者の一人からアンケートの中で、嬉しい言葉を頂いたのでご紹介したいと思います。
「自分自身の課題はモチベーションが低いことだったのですが、研修で学び、気づきがあり、モチベーションが高まりました」
ひょっとしたら、この方はモチベーションを積極性・やる気のように捉えているかもしれません。
学び、気づきによって、それが高まったと仰っています。
しかし、私は、この、学び、気づきこそが仕事(対象)へのモチベーションだととらえます。
モチベーションのハードルはもっと下げても良いのではないでしょうか。
- 職場で役割分担調整をしたら、自分のやるべきことが明確になって、悩みが減った
- 報酬制度の中身が見える化されて、人生設計が立てられるようになり、不安が減った
- 社内資格である等級が上昇すると、自分のやりたいことができると実感して、勉強を始めた
- 評価制度の面談を通じて、上司の考えが理解できるようになり、フォローがしやすくなった
- 新入社員が、毎朝気持ちの良い挨拶をしてくれるので、気分が良くなった
- 普段のルーチン業務を、ただこなしていただけだが、上司から「ありがとう」と言われて、嬉しくなった
などです。
悩みが減った、嬉しくなった、などの後半部分は、仕事へのモチベーションが高まった状態としてとらえることができるでしょう。
したがって、その要因となった前半部分に焦点をあてて、モチベーションアップ(動機付け)を考えると、アクションを起こしやすくなります。
会社の課題解決や、社員の方からの不満の声を解消するにあたり、「モチベーションアップ=動機付けの積み重ね」とハードルを下げて、具体的なアクションを考えてみてはいかがでしょうか。
アタックスグループは、人財採用基準設定から人財教育、人事制度設計・運用に関して、クライアントの皆様の顕在的・潜在的課題の解決を実現できるよう、サポートさせて頂きます。
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筆者紹介
- 株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 取締役 永田 健二
- 1999年 静岡大学卒。中期経営計画策定支援、組織風土分析支援、人事制度構築支援、人事制度運用支援などに従事。新入社員研修、中堅社員研修、管理者研修、各種個別研修など研修講師としても活躍中。
- 永田健二の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。