西浦道明のメルマガ 2013年11月
注文住宅建築業のM社は、営業マンゼロ、ショールーム・モデルハウスなしにもかかわらず、お客様からの引き合いが絶えることがない。
年間100棟を建築しているが、受注残は常に3ヶ月を維持し、毎年建築棟数は上がっていると言う。
いったいなぜ、この会社にお客様がわれ先に群がるのだろうか。
一般に住宅建築業は、本当に多くの職種・多くの関係者の共同作業があってはじめて仕事が完結する総合力を必要とする業界だ。
なかでも現場工事は住宅の品質に影響を与える極めて重要な場面であり、現場担当者の一人でもサービスマインドがずれていたらそれですべてが終わりになる業界である。
一般消費者からすれば、住宅の購入は人生最大の買い物であり、金額が高額なところへ持ってきて完成した後ずっとその家で暮らすことになる。
したがって、何か不満な点が見つかればすぐに建築会社に責任を追及する。
いわゆるクレーム産業であり、この業界に属する人々のプライドは常に傷つけられている。
当社の競争力は、創業者を後継したH社長による「顧客への感動の設計」、すなわち、顧客の期待を超えるサービス戦略にある。
どの建築業者が建設しても、売るものに大差がないのがこの業界である。
大体が、顧客は感情でお金を支払う生身の人間である。
たった一度のいやな経験で一瞬にして終わることだって多い。
したがって、「感動サービス」のレベル次第でお客様からの企業評価が決まると言っても過言ではない。
M社が優れているのはH社長の徹底振りにある。
H氏が社長に就任するや否や、お客様に心の底から奉仕ができない、H社長が目指すサービスレベルの基準に合わない社員には全員辞めてもらった。
すなわち、サービスマインドを持つ人間のみを社員として残した。
また、その後は、そうした社員しか選択しないと、社員の採用基準を明確に示したのである。
そして、毎日毎日が真剣勝負であり、毎秒単位での心遣いを大切にしている。
これは、当業界では実に大きな差別化である。
H社長は、全社員に「顧客に奉仕すること」を理解させることは絶対に重要と考え、これを実行した。
一般に、お客様へのサービスを直接担当する機会は、職位が低い人の方が多い。
サービスの品質が末端から崩れる所以である。
真に顧客志向の組織は、経営トップを含め全員が顧客の声を聴くという信念を実行しており、このM社もそういった会社なのだ。
M社の事例は、経営の成功とは成功要因の徹底であり、それをやりきる実行力こそ経営者としての力であることをまざまざと見せ付けてくれる。
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筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき) - 1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。