非常識に挑戦し「池のクジラ」を目指す -業務用厨房機器メーカーA社

経営

西浦道明のメルマガ 2014年8月

A社は、業務用厨房機器市場では、日本でも世界でも有数のポジションを誇っている。

A社は、なぜここまで成功することができたのか、今回は、A社の成功の軌跡を追いながら、成功要因を探ってみたい。

成功要因の一つ目は、50数年前、「人間、生活が豊かになると『紙・水・氷』が重要になる」とある人物から聞いたB社長が、「閃いた」ことにある。

「氷」にヒントを得て、日本ではどこよりも早く、自社オリジナルの製氷機を開発した。

極めて大きな成功には、ヒラメキが必要なのだ。

しかし、世の中はそれほど甘くはない。
試作機を10台開発したがまったく売れなかった。

ところが、それから5年後、当時の主力製品の売上が急落してしまったA社は、「この製氷機を売る以外に道がない」という状況に陥ったのだ。

ここから、A社は全社を上げて製氷機の販売に取り組むことになった。

二つ目は、自社製品の直販網を構築して製販一体型のビジネスモデルとし、且つ、地方企業にもかかわらず、まずは、業務用厨房機器の市場として一番成長性が高い東京市場の開発から手掛けたことである。

直販網を苦労して構築することになったのは、自社開発の製氷機をどこも代理店として取り扱ってくれなかったからである。

「非常識なことに、自分で創ったものを自分で売る、『製販一体』という、事業として一番困難な道を選んだ結果、一番大きな成功を獲得した」という訳だ。

人や会社の運命は面白い。

三つ目の成功要因は、日本の外食産業が成長発展段階に差し掛かる中で、事業ドメインを「冷やしの業務用厨房機器」に絞り込み、オリジナルの新製品を継続的に開発していく力を持とうと念じ、持つに至ったことである。

しかも、そのキラープロダクトである業務用冷蔵庫にいち早く目をつけ、開発して世に出した。

さらに次々と、やはりオリジナルの関連製品を世に送り出していった。

四つ目に、直販体制を整備する中で、一拠点あたりの営業マンを5~6人、サービスマンもほぼ同数とし、「効率」を捨て、「親密さ」を重視して、相互のコミュニケーションが豊かな直販・サービス体制を整備していったことである。

この直販・サービス体制に向けて、ユーザーニーズを十分に汲み取ったオリジナルの製品群を投入していった結果、他社が追随できない、極めて強固な顧客基盤が築き上がっていった。

五つ目に、国内直販網が概ねできあがった段階で、米国市場を開拓すべく子会社を設立。

さらにはその5年後に米国工場を開設。

その後も、積極的にヨーロッパ、中国、アジア、中東、南米と世界戦略を展開している。

米国に進出して30数年経った今現在、海外売上は連結売上4分の1になろうとしている。

こう見てくると、A社が成功できたのは、「非常識に挑戦」し、「小さな池のクジラ」をひたむきに目指していった結果ではないだろうか。

はじめは中小企業だったものが、結果的に世界的な大企業になった。

「何事も原理原則が大切!」ということがよく分かる好事例である。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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