ハーバルライフを育てる -株式会社生活の木

経営

西浦道明のメルマガ 2015年4月

昨年来、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得している中小企業をご紹介している。

第8回は、株式会社生活の木(以下、S社)の池クジラぶりを見ていきたい。

S社は、売上83億円(2014年)、社員数730名、1982年、3代目の現社長重永忠氏(以下、S氏)が事業転換して今日の姿になった。

1977年にS氏がハーブ(私たちの暮らしに役立つ植物の総称)事業を立ち上げたが、当時、日本ではまったくの未開拓市場だった。

1980年、「用途開発の第1号」ともいえるポプリづくりがヒットしたが、その際、ハーブ自体を売るのではなく、「文化をつくりさえすれば、モノは必要とされる」ということを学習した。

このとき以来、特定のモノを売り込むのではなく、植物の恵みを生活に活かす「ハーバルライフ」をユーザーとともに育ててきた。

このなかで、新規参入企業さえも、一緒にハーブ・アロマテラピーを広めていく「パートナー」や「同志」として位置付けた。

そして、自社開発の機能やノウハウを、ライバル企業へ積極的に提供しながら、ともに文化を育ててきた。

これは、ビジネスの世界では「非常識」である。

しかし、この結果、S社製品をこよなく愛し、遂には「ユーザーにハーバルライフを提供していきたい」とまで考える「元お客様」がS社に入社し、社員の大半にまで増えた。

S社の730名の社員は、ハーブとアロマテラピーの分野が、好きで好きでたまらないという愛好者の集まりなのだ。

他社がまったく真似のできない世界となった。

他社が真似できないことはほかにもある。

業界のパイオニアであるがゆえに独自の原材料調達ルートを持ち、世界51か国の提携農場で委託栽培を行っている。

また、流通経路も卸売りと小売りのどちらも自社で保有している。

つまり、原材料調達から販売まで、一切の機能を統合することにより、オリジナル製品の開発能力を実現した。

こうした「オール自前主義」は、アロマ関連産業では世界でも類を見ない。
 
今現在、全国に18校あるハーバルライフ・カレッジでは、講師であるハーブ・アロマ愛好者の専門性を生かした多彩な講座を数多く生み出しており、社外の専門家、愛好者から持ち込まれた企画が多い。

こうした人財をS社では「社外ブレーン」と呼んでいる。

そして、「元お客様である社員」「直営店舗」「スクール・社外ブレーン」が次々と新用途を開発した結果、自社開発のオリジナル商品は2500にまでなった。

S社のこの独自の活動範囲を「ハーバルライフ市場」と呼ぶとすれば、S社は、その「池クジラ」以外の何ものでもない。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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