一本の映画のような家づくり -株式会社都田建設

経営

西浦道明のメルマガ 2015年6月

昨年来、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得している中小企業をご紹介している。

第10回は、住宅という人生最大の買い物で最高の感動を演出する、静岡県浜松市の株式会社都田建設(以下、M社) の蓬台浩明社長(以下、H社長)が創った池クジラぶりを見ていきたい。

M社は、静岡県浜松市に本社を構える社員約60名の木造注文住宅の建設会社であり、年間100棟を超える新築住宅を施工している。

M社の業績は、2014年2月期で、年商28億6千万円である。

14期連続で増収増益を達成。経常利益率はおおむね8%~9%。ほぼ、無借金経営を実現している。

それではまず、M社が自社の「池」をどう定義しているかだが、住宅引き渡し後のお客様との関係性を重視する見地から、お客様へのアフターサービスに、1時間19分以内で駆けつけること(119対応)ができる静岡県西部と愛知県東部に、施工エリアを限定している。

次に、施工エリア内で住宅の設計施工を依頼されたお客様に、M社が提供する三つの価値である。

一つは、お客様の住宅それ自体が最大の提供価値である。お客様は、人生最大の買い物・宝物であるマイホームには大変なこだわりがある。

したがって、住宅を建設する社員たちには、最高の気配りでもって、丁寧なうえにも丁寧に仕事をしてもらいたい、というのは、お客様目線からして当たり前のことである。

H社長は、そのような社員の心を育てることに最大の労力を割いている。

工事現場を全面禁煙化しているのも、その一環である。

二つ目は、経営目標に「お客様の感動の涙、年間100回」を掲げ、これを全社員が真剣に追求していることである。

例えば、上棟式を迎えるにあたり、奥様に、ご主人に対して「感謝の手紙」を書いていただく。

また、夢のマイホームが完成に至るまでのストーリー動画を、施工後、社員がご自宅を訪問してお渡しする。

このように社員たちは、お客様に対する様々なサプライズを提供している。

三つ目は、上述した1時間19分以内に駆けつけるアフターサービスである。

この三つの提供価値は、「一本の映画のような家づくり」という、M社のブレない軸(ビジョン)から誕生した打ち手である。

なにより、社員たちに、お客様に尽くす心と、信頼する仲間と協力し合う一体感が醸成されていないと生まれない。

住宅建設は社員たち一人ひとりが心を込めて行う共同作業だからだ。

H社長は、社員たちの心を育てるため、「BBQフィロソフィー」と呼ばれる全社員参加型の恒例イベント(お昼休みに開催するバーベキュー大会)を開催している。

H社長は、自社が単なる住宅販売業ではなく、「ライフスタイルを提案するホスピタリティ業」でありたいという想いが極めて強い。

そのため営業マンを置かず、ショールームやモデルハウスも持たない。

営業はすべて「口コミ」と、定期的なセミナー・見学会・ブログの更新などにしか頼っていない。

しかし、M社は1年分の受注残を抱え、お客様は行列待ちの状態である。

ここまでから明らかなように、M社は、地元において「住まいを核とするライフスタイル提案型ホスピタリティ業」という「池」を築き、そこの「クジラ」になっている。

  
  
アタックスグループでは、1社でも多くの「強くて愛される会社」を増やすことを目指し、毎月、優良企業の視察ツアーを開催しています。
視察ツアーの詳細は、こちらをご覧ください。

西浦道明のメルマガバックナンバー 一覧へ

筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
タイトルとURLをコピーしました