燃やさない建設廃棄物処理 -石坂産業株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2018年6月

2014年から当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載46回目の今回は、埼玉県入間郡三芳町で「産業廃棄物リサイクル業」を営む、石坂産業株式会社(以下、I社)の池クジラぶりを見ていきたい。

I社は、1967年7月、現代表取締役の石坂典子氏(以下、娘)の父、石坂好男氏(以下、父)が設立した。

当時、産業廃棄物のほとんどがゴミとして埋め立てられていた。

父は「いずれゴミを埋め立てる時代は終わる」と考え、1986年、産業廃棄物焼却処理施設の本格稼働を開始した。

ところがそんな矢先、I社を大きく揺るがす「所沢ダイオキシン騒動」が発生。

所沢の農家が栽培する野菜からダイオキシンが検出されたという誤報道によって、I社がマスコミのターゲットにされ、後に問題ないと分かったが、風評被害のため、地域社会から激しいバッシングを受けた。

そんな窮地にあって、「産廃処理業が大変価値のある仕事であり、その社会的意義をどうしても世の中に分かってもらいたい」との思いから、I社は、騒音・振動・土塵を出さない全天候対応型、新型リサイクルプラントの開発に踏み切った。

売上25億円(現在51億円)のとき、40億円の工場投資を実行すべきと父を説得したのは娘だった。

その話を聴き入れ、15億円かけて建設した焼却炉の撤去を決断、多額の個人保証をして資金調達し、理想実現に向けて舵を切ったのは父だった。

娘は、2億円かけて工場見学道路を取り付け、I社流の産廃処理業を可視化。

今や年間3万人の見学者を呼び込み、産廃処理に対する世の中の理解を深めている。

父と娘は、I社をリサイクル業のロールモデルとするため、3つの改革に取り組んだ。

まず1つ目は、建設廃棄物(不燃廃棄物)への特化だった。

同業他社は、焼却が主軸だったため、リサイクルが困難なコンクリートの瓦礫や、ガラス、木片など複数の素材が混ざり合う混合廃棄物を避けていた。そうした時代背景の中にもかかわらず、I社は、燃やさない建設混合廃棄物の資源化に舵を切った。

2つ目は、独自の土砂系廃棄物の選別技術の研究開発である。

これは、I社に不燃系廃棄物を搬入する業者へのゴミの分別分級の徹底指導が主となる。

業界で主流になっていた、1台当たり、1t当たりといった価格体系を、トラック1台毎に搬入物の中身を査定し、価格に反映する仕組みに切り替えた。

さらには、分別が甘ければ安い料金でしか引き取らず、逆に、キチンと分別されていれば高く引き取ることにした。

それに合わせ、産業廃棄物の分別分級査定情報システムも構築した。

また、廃棄物搬入ガイドブックを作成し、ルールの徹底を図った。

その結果、「リサイクル化率98%」を達成する礎ができた。

生まれ変わったゴミは、ブロック、砂、各種金属にリサイクルされ、再生商品として販売対象となっている。

3つ目として、娘は人財育成に取り組んだ。

まずは、全ての社員と定期的に交流する「きずな塾」を設けた。

敷地内にある足湯に浸かりながら、社員と懇親するお茶会を開催。

また、現場を巡回して直接社員に声をかけ、情報共有の徹底を図った。

さらに、「人間力」と「技」の向上を目的とする社員教育プログラム「石坂技塾」を開講している。

I社は、燃やさない建設廃棄物処理に挑戦。

建設廃棄物処理の分別分級技術で98%のリサイクル化を確立した。

今や、土砂系混合廃棄物の中間処理業の最先端を走る、「資源エネルギー供給産業」という池(市場)のクジラになっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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