真の循環型農業を追求 -株式会社サラダコスモ

経営

西浦道明のメルマガ 2018年10月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載50回目の今回は、岐阜県中津川市で、野菜づくり農業、ちこり焼酎製造および販売、教育型観光生産施設「ちこり村」の運営、種子開発事業等を行う株式会社サラダコスモ(以下、S社)の池クジラぶりを見ていきたい。

S社は、現社長の中田智洋氏(以下、N氏)の父親が1945年、中田商店として創業。

ラムネ飲料の製造販売をしていたが、冬場の副業としてもやしの栽培を始めていた。

1978年、脳梗塞で倒れた父親に代わり28歳で社長に就任。

1980年、子供の歯を虫歯にしてしまう後ろめたいラムネビジネスの廃業を決め、もやしビジネス専業となった。

ところがその当時のもやし業界では、漂白剤、保存剤、殺菌剤などが見た目を良くし日保ちを長くさせるため必要悪として使われていた。

そんな考えに賛同できなかったN氏は、種から良質なものを栽培し、無漂白・無添加で行くことにした。

しかしこれでは傷みやすいし色もすぐに黄ばむ。

スーパーは見た目の悪さを理由になかなか店舗に置いてくれなかった。

そんな中、生活協同組合(生協)だけは、「食品の安全」にこだわり採用してくれた。

S社のもやしは、生協で評価が高まっていき、やがて大手スーパーにも広がり、80年代前半には世の中の主流となった。

もやしに続き、カイワレ大根、豆苗、アルファルファ、発芽大豆、ブロッコリー、空心菜、おくら、ささげ菜等のスプラウトを施設栽培(工場生産)していった。

一方で、S社は、包装紙の改良にも取り組んだ。

大学との共同研究により、もやしの鮮度が落ちない包装紙を開発した。

これにより、それまで半径30kmといわれていたもやしの商圏を、300kmにまで飛躍的に拡大することに成功した。

こうして新鮮な野菜を、無添加・無農薬・無漂白と安心・安全な状態で大量に工場生産し、大消費地に鮮度を落とさず流通させることができるようになった。

またN氏は、オランダで出会ったちこりの国産化に取り組んだ。

ちこり事業は、国内での流通量・競合が少ないため地元の生産者を邪魔しない上に、食糧自給率の向上に貢献できる。

さらに耕作放棄地を有効利用でき、高齢者の働く場の確保も可能なため、特別に力を入れた。

想いを形にしようと、2006年、ちこりを生産・販売するに留まらず、教育型観光施設を立ち上げた。

ちこりから作った焼酎・茶・珈琲・クッキー・アイスを売る売店、レストラン、ベーカリー、カフェまである「ちこり村」である。

開設当初1日当たり5~6人だった来園者数は、2017年に約30万人にまで増加している。

ここで追求しているのは真の循環型農業である。

S社は、無添加・無農薬・無漂白で安全・安心、食べて健康という思いで事業開発・商品開発を進めてきた結果、有機栽培・無農薬の発芽野菜を大量生産して全国の大消費地に届ける市場(池)を築き上げ、そのクジラとなった。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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