食品トレー容器の小売業繁盛支援業

経営

西浦道明のメルマガ 2019年3月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載55回目の今回は、ポリスチレンペーパーおよびその他の合成樹脂製簡易食品容器の製造・販売、並びに関連包装資材等の販売を行うF社の池クジラぶりを見ていきたい。

F社は1961年創業。現在、スーパーマーケット、食料品店などで使用される食品トレー容器の専業メーカーである。

食品トレー容器は、1950年代にスーパーマーケットが誕生して以来、60年代に食材を売り場から家庭へ運ぶために開発された。

70年代に持ち帰り弁当が登場すると、スーパーマーケットの全国展開に合わせ、食品トレー容器に入った料理が一般家庭に広まった。

さらに80年代、効率を追求する生産者目線から白色の食品トレー容器しか製造していなかった業界に変化が生じ、カラートレー、色柄付トレーが登場した。

この流れをリードしたのがF社だった。

単に安価な商品の大量販売時代は終わり、食品により販売価格や販売方法が変わるのに容器は同じということを疑問に思ったF社は、安売りの肉などは白色トレーでも、和牛など値段が高い商品向けに食欲をそそりグレード感を感じさせるため、カラートレーを開発した。

カラートレー、色柄付トレーの誕生により、エンドユーザーもお皿に移し替えずトレーのまま食卓に出すようになった。

その後も、F社は食文化・食生活の変化を常に先取りし、そのまま“器”として活用できる容器、電子レンジ対応の容器、汁などがこぼれない容器など、お客様の顕在・潜在ニーズを取り入れ、次々と新製品を開発していった。

F社が、お客様のニーズに応えている理由の1つは研究開発である。

環境への配慮から、容器の軽量化や薄肉化、強度を保つ新たな形状の設計や発泡倍率を高める技術を確立。

研究所内での活動に留まらず、開発担当社員がスーパーを訪問して市場動向の検証もしている。

理由の2つ目は売り場支援である。

小売業・販売業向けにフェアを開催しており、全国各地から15,000人が集まる。

全国の店頭で実際に売上が向上した成功事例を公開したり、POPや売り場づくり、季節ごとのメニュー提案など、小売店の売上拡大のためのトータルな提案を行なっている。

理由の3つ目は自前の配送手段である。

在庫を抱えることができない小売店向けに、必要な時に必要とされる少量・多品種の製品を届ける集配システムを整備した。

F社は研究開発で年間2,000アイテム以上もの小売業向け新製品を次々と開発し、売り場支援サービスを加え、自前の配送手段を通して提供して来た結果、国内の食品トレー容器市場の中で30%近いシェアを占め、競合他社約100社中トップとなっている。

F社は、必要な時に必要な食品トレー容器を配送し、同時に小売業繁盛ノウハウまで提供する「食品トレー容器ベースの小売業繁盛支援業」という市場(池)を築き、そのクジラとなった。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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