私のお店・私の共同購入・私の生協 -生活協同組合コープみやざき

経営

西浦道明のメルマガ 2020年3月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介しています。

連載67回目の今回は、宮崎県で、生鮮品、食品、雑貨・衣料品等を中心に、店舗事業と共同購入事業等を行なう生活協同組合コープみやざき(以下、C社)の池クジラぶりを見ていきます。

C社は1973年、690名の組合員が「毎日の食事に体をむしばむ有害添加物が入っているということは、私たち母親・主婦にとって決して許すことはできない」との思いで設立しました。

以来成長発展を続け、2019年3月末現在、組合員は25万3450人、県内世帯加入率は53.5%です。

ちなみに、各県毎の生活協同組合の評価が表れる世帯加入率は、同じ九州地区の「佐賀」20.0%、「熊本」20.1%、「大分」34.2%、「鹿児島」43.1%と比べ、さらに「沖縄」の41.0%と比べても極めて高いものです。

ではなぜC社は、これ程までに県内で高い支持を得ているのでしょうか。

まず1つ目は、何よりも生協観をはじめとする経営に対する基本的考え方が、役職員に徹底されているからです。

いわゆる理念経営です。

生協は、組合員がくらしに必要なものを買うためにつくった組織です。

一般小売業が商品を「売る」ことが目的なのに対して、生協は「組合員が求める商品を購入する」ことが目的です。

つまり、「販売業」ではなく「購買対応業」なのです。

組合員のくらしに役立ち続けるという生協の方向性を徹底させ、組合員と役職員が力を合わせる組織となっています。

2つ目は、組合員の声が十分に活用されているのです。

C社には、組合員の声が年間8万件以上届き、血液のように組織を流れ、事業経営や商品の開発・改善に生かされています。

「よかった」の声は、生協だけでなく、取引先、実際に生産に関わった人、さらにはその原料を準備した人など、その商品に関わった全ての人に繋げられ、皆が幸せを感じてもらえるよう努力しています。

その結果、小さくてもキラリと光る、感性豊かな生協づくりが行われています。

一方で、対策が必要な情報は解決部署に繋げられ改善に生かされています。

店舗での具体的な事例を見てみましょう。

調理済みで売られている野菜天串を「家で揚げたいので原料のまま5本欲しい」という要望に対し、10本入1袋で売っているものを5本で販売しています。

「巻き寿司10個入りは食べきれない。減らせないか」という要望にも、詰め替えて5個入りで販売。

さらに、こうした組合員の声を、特殊事例として受け取るのではなく、他にも同じように考える組合員がいるのではと考え、5個入りの品揃えを増やしました。

すなわち、組合員からの声を聴いて、職員が良かれと思ったことは「まずやってみる」ということが徹底されているのです。

生協総合研究所が2018年に行った全国組合員意識調査における店舗満足度では、全国平均を20~30%も上回っていました。

同生協が行った組合員満足度の経年変化も、2008年は88.6点、2013年は90.3点、そして2018年は92.6点と、年を追う毎に上がってきています。

C社は、組合設立以来、組合員が欲しいと思う商品を購入する購買対応機能を果たし続けることで高い評価を得てきました。

C社は、宮崎県民にとって、日々の生活になくてはならない「私のお店・私の共同購入・私の生協」という市場(池)を築き、そのクジラとなっています。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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