南部せんべいと言えば… -株式会社小松製菓

経営

西浦道明のメルマガ 2020年11月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載75回目の今回は、岩手県二戸市で、岩手県特産の南部せんべいの製造・販売を行う、株式会社小松製菓(以下、K社)の池クジラぶりを見ていきたい。

K社は、1948年4月、小松シキが21丁の焼き型から始めた南部せんべい屋が始まりである。

南部せんべいは、元々500年以上前から、岩手県中央部から青森県南部にかけて位置していた南部藩の野戦食だった。

白米を簡単に口にできない貧しい農家では、お婆ちゃんが囲炉裏端で焼く蕎麦粉や小麦のせんべいは、大切な主食でもあった。

また同地区には、江戸時代からせんべい汁という、南部せんべいを醤油味で煮立てた伝統料理もあった。

K社は、南部せんべいの製造・販売で、60億円市場の過半数を売り上げる、現在業界ダントツ1位である。

では、なぜK社は、各家庭で日常的に見られた南部せんべいという食材で、顧客からここまでの支持を得ることができたのだろうか。

何と言っても、その「商品開発力」の高さが理由である。

南部せんべいは、元々岩手の郷土料理の具材として使われ、地元の高齢者には昔から親しまれていたが、女性や子供にはなかなか浸透していなかった。

そこでK社は、1969年、バターや砂糖、卵の入った甘く香ばしい厚焼きせんべい「まめごろう」を開発した。

これまでにない、クッキーやサブレのような少し洋風のサクサクとした歯ごたえと口の中でホロホロと崩れていく食感が受け、人気商品となった。

その後、洋菓子風の味わいを加えたCAFE巖手屋、お酒と一緒に楽しむBAR巖手屋など、個性豊かな商品が数多く開発され、現在、商品の種類は100種類を超える。

そうした商品群の中でも、とりわけ反響が大きかったのが2009年に開発された「チョコ南部」である。

一度焼きあがったせんべいを粉々に割り、チョコをコーティングするという大胆な発想から誕生した。

社内から猛反対があったが、発売当初から予想の10倍を売り上げる大ヒット商品になった。

K社には、過去の業界常識を覆す、革新を受け容れる風土があったのだ。

さらに情報発信力も高い。K社は2016年10月にロードサイド型の、二戸由来の店舗名「北のチョコレート工場&店舗2door(ツードア)」を開店させた。

工場はガラス張りで誰でも見学自由で、イートインスペースもある。

さらに同敷地内には、蕎麦や天ぷらの食事処自助工房「四季の里」や創業者の小松シキ・記念館もあり、K社はこれら一帯を「南部煎餅の里」として運営。

県内外から多くのお客様が来訪し、新たな観光・お土産スポットとして人気を博している。

K社は、郷土食であった南部せんべいのバリエーションを増やし、新需要を創造し続けることで全国的に高い評価を得てきた。

K社は、「南部せんべいと言えば小松製菓」と言われる、南部せんべい市場(池)のクジラとなっている。

  
  
アタックスグループでは、1社でも多くの「強くて愛される会社」を増やすことを目指し、毎月、優良企業の視察ツアーを開催しています。
視察ツアーの詳細は、こちらをご覧ください。

西浦道明のメルマガバックナンバー 一覧へ

筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー

公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)

1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
西浦道明の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。
タイトルとURLをコピーしました