西浦道明のメルマガ 2021年2月
2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。
連載78回目の今回は、愛知県一宮市で、新築・増改築・リフォーム+薪ストーブの販売・施工を行う株式会社エコ建築考房(以下、E社)の池クジラぶりを見ていきたい。
E社は、現取締役顧問の高間利雄氏(以下、T氏)が1998年に創業した。
T氏は、元々、住宅メーカーで注文住宅の営業をしていた。
お客様のこの先の人生を一緒に真剣に考えることができることに、最高の喜びを感じていた。
しかし、ある時、お客様から「新築の家に住みだしてから頭痛がする」と言われた。
調べると、新建材に含まれる接着剤や化学薬品が人体に悪影響を及ぼすことが分かった。
唖然としたT氏は会社を辞め、「少なくとも私が建てる住宅は、健康を害することが絶対にあってはならない」との信念で、木造注文住宅の建築会社、E社を創業した。
T氏は、娘婿の喜多茂樹氏(以下、K氏)に社長を譲り、E社は、引き続き尾張や岐阜地区を中心に年間30棟ほどの木造注文住宅を手掛けている。
T氏の志はK氏にしっかり引き継がれ、お客様からは、健康・安全・安心な住宅との高い評価を得ている。
また、E社で自宅を建築した元顧客が社員になってくれており、元顧客の社員の割合は、現社員の5人に1人と、全体の2割にも及ぶ。
そうした元顧客の社員は、一級建築士がお客様の要望をヒアリングする段階で加わり、お客様アドバイザーとして活躍してくれている。
では、E社のどこが池クジラなのだろうか。
まず、お客様は、本社から車で1時間以内の圏内で、価格は多少高くても健康・安全・安心な建築資材を使うことに賛同してくれる方だ。
また、住まいづくりに際し強くこだわっている提供価値は、湿気を通す木材とその木材に含まれている成分の安全性確認から生み出される、ほかにはない健康・安全・安心な木の住空間である。
使用する木材はすべて国産にこだわり、かつ、東濃ひのきや長良杉といった産地がはっきりした木材にしている。
乾燥方法にもこだわり、骨組みには天然乾燥材を使用して、腐りにくく粘り強い丈夫な骨格をつくっている。
さらに、有名大学と木の家が健康に与える影響を共同調査し、ショールームではE社の住宅と一般住宅を比較できる実験棟を設け、提供価値の視える化に取り組んでいる。
また、岐阜県岐阜市長良に建設した自社工場では、E社専属の熟練大工が要所要所で手作業による微調整を行い、家の敷居、鴨居、階段といった造作材のほか、屋根材も仕上げている。
大工は、自ら担当する家の造作材を加工することで、一棟一棟、責任を持って家づくりを行うという意識が植え付けられている。
ちなみに、E社がやらないと決めているのは、住宅商品のラインナップ、営業マン、値引き、相見積もり、エリア拡大、設計事務所からの施工依頼、分譲住宅と土地の販売である。
尾張・岐阜地区において、国産無垢材と自然素材にこだわった健康・安全・安心な住空間の提供を通して高い評価を得てきたE社は、尾張・岐阜地区の国産無垢材にこだわった木造健康住宅市場(池)のクジラとなっている。
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筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき) - 1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。