西浦道明のメルマガ 2021年3月
2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。
連載79回目の今回は、静岡県三島市で、総合外装事業とアジア人材育成&活用事業を行う南富士株式会社(以下、M社)の池クジラぶりを見ていきたい。
M社は1944年、現会長の杉山定久氏(以下、S氏)の父親が杉山製材所として創業した。
当時は一般の製材業だったが、S氏が先代からバトンタッチした際、当時20人いた社員のうち13名が離職した。
理由を聴くと、「この会社には夢がなく、5年後、10年後の自分たちの展望が持てない」ということだった。
そこでS氏は、「既成概念に囚われない、柔軟な発想の、もっとわくわくする、価格決定権のある元請事業をやろう」と強く決意した。
S氏は、某メーカーの屋根材・外壁材の代理店だったことから、その販売と施工に特化すると決めた。
この分野では、新築の屋根施工やリフォームの屋根葺替は数百万円単位の工事になり利益率も高いため、多くの企業が対応する。
一方、屋根の小工事は手間がかかり採算性が悪いためどの業者も敬遠する。
台風被害の対応も大工事につながることは稀で、手間と労力の割に採算性が悪い。
そんな中、M社は、他社がやらない屋根の小工事や台風被害などのお困りごとに特化し、誠実、且つ、迅速に対応している。
お蔭で、お困りごとを抱える多くのお客様から大いに感謝され、社員や職人のモチベーションは極めて高い。
当然ではあるが、お客様から大いに信頼されている結果、M社は、関東一円にある20箇所の営業所を通して、毎月約1000棟の工事を受注することとなり、日本最大の外装工事会社となった。
また、M社は職人育成力が極めて高い。
住宅建設業界では、これまで十分な職人育成がされてこなかった。
そこで、未経験者から一人前の職人に育成する独自の教育システムをつくった。
健康でやる気の高い屋根職人の見習い希望者を集め、半年間の研修を行う。
見習いは、最初の1~2週間は工事現場に慣れ、その後、3~5ヵ月間で、様々な現場に出る。
研修期間中に60~70の現場で、すべての種類・タイプの屋根工事を経験し、どんな屋根工事にも対応できる技術を身につける。
さらに、現場では、技術指導のベテランの親方が基礎技術を指導し、現場でのお客様の悩みや相談に応えることで人間力も鍛えられる。
またM社では、専属契約をする職人やネットワークに所属する熟練職人を500人抱えている。大変なネットワーク力である。
きちんとした仕事をする職人にいつでも発注できるネットワークが大切と考えたS氏は、技術がしっかりしており、安全な仕事をし、マナーもいい職人さんを育成して、信用を獲得しようと考えた。
M社は品質を保証するために、業界でいち早く10年間保証制度を採用し、お客様に、M社の工事が安心してもらえるものというアピールと、常に高品質を保つという自信のほどを示した。
業界では、高齢化、若者の現場離れなどにより、職人が年々減少していく中、M社は500人という職人集団が決定的な強みとなり、有事にも強い。
M社は、質の高い職人を育成し、職人のネットワークを築き、小工事や台風被害に真摯に対応したことにより、多くのお客様から高い評価を得てきた。
M社は、関東一円を中心とする屋根・外壁工事分野(池)のクジラとなっている。
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筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき) - 1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。