西浦道明のメルマガ 2021年6月
2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。
連載82回目の今回は、神奈川県横浜市中区で、化粧品・健康食品の研究開発、製造および販売などを行う株式会社ファンケル(以下、F社)の池クジラぶりを見ていきたい。
F社は、1980年、池森賢二氏(以下、I氏)によって化粧品の通信販売業として創業された。
「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」を理念に掲げ、一貫して社会課題の解決に取り組んできた、無添加化粧品やサプリメントのパイオニアである。
不の解消の1つ目は無添加基礎化粧品の開発である。
F社は、1982年、無添加基礎化粧品を小瓶に詰めて販売した。
そのきっかけは、I氏が奥様の顔の肌荒れがひどいことに気づいたことだった。
調べると、社会問題にまでなった、化粧品に防腐剤などの添加物が含まれていた「化粧品公害」が原因だと分かった。
しかし、同業他社は、防腐剤を入れないと保存が難しいため放置していた。
そこでI氏は、業界がやらないやれない業界の非常識に挑戦し、傷まずに使い切れる、1週間分の量を5mLの小瓶に詰めて販売した。
F社が発売した化粧品は、肌にトラブルを抱えていた多くの女性から高い支持を受け、創業からわずか2年でお客様の数は3万人を超え、売上も1983年から1985年の3年間でほぼ倍増した。
不の解消の2つ目は販売方法である。
F社は1980年の創業時から化粧品の通信販売をしている。
通信販売のデメリットは、受け取り側の不在に起因する不便さや、配達ドライバーと直接会いたくない不安にあった。
そこで1992年、配送箱に郵便受けに投函できるポストサイズにし、受領印不要でお届けするポストインを開始した。
さらに1997年には、日本で初めて「置き場所指定お届けサービス」を開始した。
このサービスは、玄関前やガスメーターボックス、集合ポストといったお客様指定の場所に荷物を置くもので、これも受領印不要とした。
これにより、配達ドライバーと対面の必要がなくなり、お客様の「不」の解消につながった。
不の解消の3つ目は、健康食品業界の改革である。
1994年、栄養補助食品の通信販売を開始した。
当時、日本で販売されていた健康食品は非常に高く、利用者に不満があった。
そこでI氏は、「サプリメントは本来毎日摂り続けてこそ効果が出るもの。
人々の健康のために適正価格で販売できないか」と、価格破壊に取り組むことを決めた。
原料には徹底的にこだわりつつ、中間マージンを削減した。
これにより、高品質かつ低価格が実現でき、サプリメント市場が創造された。
また、現在では当たり前のアルミ袋包装も、F社が日本に広めた。
ちなみに、サプリメントという言葉を日本で初めて使ったのもF社である。
これらの不の解消に向け、F社では、人財育成も積極的に行っている。
その1つが「ファンケル大学」だ。
ここでは、理念を体現できる人財、次世代のファンケルを担う人財、グローバルに活躍できる人財、専門性の高い人財の輩出に力を入れ、この4つのあるべき人財像に基づき研修プログラムを実施し、社員一人ひとりが不の解消に真剣に取り組んでいる。
F社は、世の中にある「不」の解消という社会課題の解決に取り組むことで、高い評価を得てきた。
F社は、化粧品・健康食品の「不」を解消する市場(池)のクジラとなった。
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筆者紹介
- アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき) - 1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。