農作業の重労働を軽減する池クジラ -株式会社ニッカリ

経営

西浦道明のメルマガ 2022年1月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載89回目の今回は、岡山で、園芸機器、モノレールを主製品とする農林土木機械の製造・販売を行う株式会社ニッカリ(以下、N社)の池クジラぶりを見ていきたい。

N社は、1959年、設立された。

元々、N社が立地する岡山県は、畳の材料となるい草の栽培が行われていて、最盛期の1960年代には生産量日本一を誇っていた。

ただ、い草を、鎌を使って収穫することはつらい作業になっていた。

海外製の大型の草刈機は、日本の農地や日本人の体形に合わないなどの問題もあり導入が進まなかった。

設立以来、農家からの「農作業の負担を軽くしたい」という声に応えてきたN社は、日本初の肩から下げる携帯用草刈機を開発した。

販売するや、大幅に作業負担が軽減されると評判となり、全国各地の農家が導入。
さらに、その汎用性の高さから、い草以外でも利用され、人気商品となった。

次に開発したのが、今や、国内トップシェアで、世界シェア約7割と推定されるN社の代表的商品、農業用急傾斜地軌条運搬機(モノレール)である。

開発のきっかけは、みかん農家からの「斜面での果物の収穫・運搬を楽にするものを作ってほしい」という声だった。

それまでは、収穫したものを籠などに入れて、それを背負いながら斜面を移動しなければならず、負担が大きかった。

そんな声に応えたモノレールは、1966年に発売を開始したところ、それまで一直線にしか動線を確保できなかった索道などの課題が解消され、斜面に自由に動線を設定でき、重い収穫物を自ら持つことがなくなった。

また、当初は収穫物や荷物の運搬向けだったが、1994年には人間1人、1996年には多人数が乗用可能となり、改良・開発が進んだ。

現在ではその用途を広げ、果物畑だけではなく茶畑などの同様な傾斜地にある畑でも利用されている。

また、同製品は高品質だったこともあり、農業用だけでなく、レジャー用、バリアフリー用など、新分野へのオーダーメードでの展開も進み、多くの業界で活用されることになった。

さらにN社では、林業、建設・土木工事での資材や人の運搬などで拡大する需要に対応するため、モノレールの運搬能力を、200kgから500kg・1tと高めていき、現在、積載量3tのモノレールまで揃えるなど、お客様のあらゆる要望に対応している。

N社は、さらに、和歌山大学との共同研究による身体に装着して重量物の持ち運びなどをサポートする「パワーアシストスーツ」の開発、生研センターや日本財団との共同開発による「腕上げ保持器具」の開発など作業者の労力軽減を実現してきた。

N社が、お客様のどんな要望にも対応できるのは、「お客様とともに考える」をキーワードにしてお客様の「こんなものを造れないか」という声を社員たちがカタチにしてきたからだ。

社員たちは農家の悩み・ニーズを徹底的に探り、その解決策を真剣に考え、それを形にするための商品開発・改善に取り組み続けてきた。

その結果、農業以外の分野をも含めて、新用途が次々と開発される好循環が生まれた。

N社は、お客様の立場に立って考えた、重労働を軽減する農業用機械を提供し続けることで、社会から高い評価を得てきた。

N社は、農作業の重労働を軽減する農業用機械(池)のクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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