食べることができる化粧品 -株式会社ルバンシュ

経営

西浦道明のメルマガ 2022年9月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載97回目の今回は、石川県能美市で、化粧品及び医薬部外品の製造、販売を行う株式会社ルバンシュ(以下、R社)の池クジラぶりを見ていきたい。

R社は、1990年11月、現社長の千田和弘氏(以下、S氏)が25歳の時に脱サラして立ち上げた。

創業のきっかけは、父親が経営する食品研究会社での、ある出来事だった。

某健康食品メーカーから、化粧品の成分に関する分析を依頼されたが、驚いたことに、その製品は自然派化粧品とうたわれていたものの、実際には、体の中に入ると害になる成分がいくつか見受けられたのだ。

S氏は「化粧品は肌に直接触れたり、唇に付けたりするので、どうしても誤って口などから体内に入り込む可能性がある。」「生涯で食べてしまう化粧品の量が1.7kgにもなるという話もある。」そうした原料が化粧品に使われている事実は、化粧品業界では普通かもしれないが、食品業界にいたS氏にとって既存の化粧品に使われている成分の安全性に疑問を抱き、「食べることができる化粧品を作ろう」と決意し、創業した。

ちなみに、社名のルバンシュは、フランス語で「復讐(ふくしゅう)」という意味で、「業界に一石を投じたい」という思いを込めた。

創業当時、すぐ自然派化粧品を作ろうとしたが、化粧品を製造するためには、厚生労働省から認可された原料を使用しなければならず、S社が化粧品づくりに使いたかった食品由来の原料は少なかった。

そこで新たに原料の認可を取ろうとすると、膨大なデータ集めと経費がかかるなどの障害があり、多くの苦労を重ねた。

そんな中、R社に大きな転機が訪れた。

2001年に薬事法が改正され、使用する原料が審査制度から登録制度に変更され、自己責任で原料を使用できるようになり、天然由来の商品を拡充することができるようになったのである。

その流れの中、2000年に、化粧品業界初となるキャロット油など食用成分100%の基礎化粧品「ベジタブルリップクリーム」を開発した。

S氏は、まずリップクリームの開発に取り組んだのは、「口に塗っても安全なリップクリームこそ、S氏の使命感を最も具現化した商品であり、R社のコンセプトを届けるのに最適な商品。

これがヒットしなければ、R社は社会から必要とされないに違いないとの覚悟を決めてのことだった。

結果として完成したリップクリームは、100万本以上の販売数を誇るR社の代表的商品となり、現在も多くの顧客から高い支持を得ている。

現在では、そのほかに、食用成分100%のスキンケア(クレンジング・洗顔・化粧水・保湿クリーム)やハンドクリーム、海を守る環境にやさしい日焼け止めなどの商品が次々と生まれている。

しかも使われている素材は、加賀野菜の「金時草(きんじそう)」や能登海洋深層水といった地元石川県産の素材など、自然由来の成分にとことんこだわっている。

R社は、化粧品にありがちな流行やファッション性を追求するのではなく、あくまでもスキンケアの基本に立ち返り、肌に良くそれでいて人にはもちろん自然環境にもやさしい化粧品をつくることで、お客様から高い評価を得てきた。

R社は、人が食べられるほど安心な自然派化粧品の研究開発型企業という市場(池)のクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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