パイと言えば… -リボン食品株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2022年11月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載99回目の今回は、大阪府大阪市淀川区で、マーガリン製造販売・パイ冷凍生地及びパイ関係食品製造販売を行う、リボン食品株式会社(以下、R社)の池クジラぶりを見ていきたい。

R社は、1907年、千足栄蔵(ちあし・えいぞう)氏が創業し、マーガリンを日本で初めて製造した。

16歳のとき単身渡米し、大学で酪農を専攻し、約10年後、日本で酪農事業を興す志を立て帰国した。

当時、日本ではバターやマーガリンの消費量はごくわずかだったが、習得した技術を生かすべく、横浜に工場を建てた。

1936年、創業者の弟であった筏盛三(いかだ もりぞう)氏は、マーガリンの研究に心血を注ぎ、今日の、R社の高い製造技術の基礎を築いた。

太平洋戦争後、戦地から戻った筏盛三氏の二男、大一(だいいち)氏は、マーガリンとバターをブレンドした日本初のコンパウンドマーガリンを開発し、業務用にも展開した。

さらに、R社は、大一の息子の筏純一氏の力も得ながら、マーガリンに小麦・塩・水を加えて、日本初の冷凍パイ生地・冷凍ケーキなどを他社に先駆けて開発、業務用に発売した。

このように、マーガリン及びそれを活用したパイ生地等を中核に新製品を次々と開発し、レストランのシェフや製菓関係のプロフェッショナルたちの様々なニーズに応え、業務用商品を展開してきた。

例えば、1970年に販売開始した冷凍パイ生地の誕生秘話は次の通りだ。

当時パイ生地は、一流といわれるホテルのレストランで、特異な製法で3日間かけて生産し、職人に大きな負担をかけていた。

それをR社は、同じ製法で生産し、解凍すればすぐに使えるように改革。

1973年に発売した冷凍ホットケーキも同様に、当時、喫茶店の人気メニューだったホットケーキは、注文の有無にかかわらず、鉄板を常に温め、タネも作っておかねばならず、業務上、とてもロスの多い商品だった。

R社の冷凍ホットケーキは、彼らの悩みを瞬時に解決した。

その他、様々な製品を通じてそれまでの時間・手間をかけることなく高い品質が得られるように業務上の問題解決を図り、一般の洋菓子屋さん、レストランに普及させていった。

その後、2013年に純一の娘、由加子が入社してからは、「パイといえばリボン食品」というイメージを定着化させた。

また、110年の歴史の中でずっと100% BtoBとして運営していたR社を、NYの人気ブラウニー専門店、Fat Witch Bakeryと組んでBtoC事業に着手する、社長就任後は日本を変えたいという一心から産前産後の女性をサポートする食品ブランドをスタートする等、新しい事業にも果敢に取り組んでいる。

R社では、企業規模について、「ユニークさを追求するためには、わがままでなければならない」「会社としては小粒だけれども、山椒のようにぴりりと辛い。私たちが目指すのは、そんな存在感のある企業」という考えを持っている。

そのため、会社を大きくすることはせず、中小だからこそできる小回りの良さを生かそうと、原材料や配合、容量など、お客様ごとの細かな要望に応えてきた。

その結果、現在の注文の7~8割は、ホテルやレストラン、洋菓子店・ベーカリーといったお客様の個々の要望に合わせたオーダーメイドとなっている。

R社は、大手食材メーカーならば、費用対効果のハードルを越えられず撤退してしまうであろう小ロットの製品を商品化することで、お客様から高い評価・信頼を得てきた。

R社は、ホテルやレストラン、洋菓子店・ベーカリー業界のお客様に、各種マーガリン、マーガリン由来のパイ生地等をオーダーメイドで提供する食品材料市場(池)のクジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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