ITを活用してお客様の企業体質を変える -株式会社テクノア

西浦道明のメルマガ　2023年8月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池（市場）」を見つけ出し、その池の「クジラ（圧倒的なシェア・ナンバーワン）」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載108回目の今回は、岐阜県岐阜市で、業務用パッケージソフト開発／販売、システムインテグレーション、フィット＆ギャップコンサル、各種情報機器などの販売及び保守サービスを行う株式会社テクノア(以下、T社)の池クジラぶりを見ていきたい。

T社の創業は、1981年7月、岐阜市柳生町にて創業者の大道等氏が創業したのが始まり。

大手システムベンダーで営業を手掛けていた大道氏は、顧客の課題を解決するためにシステムを受注したものの、その思いが社内の開発部門に伝わらず、思ったようなソリューションに繋がらないことに不満を覚えていた。

そこで、自らの全責任で当該業務が実現させられる環境をつくろうと、勤務地であった岐阜市で独立を果たす。

ちなみに、社名の由来は、テクノロジー（科学）とノア（文化）の融合と調和から来ている。

創業後、しばらくは受託開発に取り組んだが、1993年に第1号の独自開発パッケージとして、建築石材専用CAD「PIETRA(ピエトラ)」をリリースする。

建築石材事業者のニーズを汲み取って開発された「PIETRA(ピエトラ)」は、先行して注文が入るなど、業界から絶大な支持を得た。

その翌年に、現在のT社の代表的製品となっている「TECHS-S(テックス・エス)」をリリースする。

発売以来、この「TECHSシリーズ」は、2021年度の生産管理ソフト部門での日本一の出荷本数とシェア31.7％を誇り、これまでに全国4,400社以上に導入されるまでになっている。

「TECHSシリーズ」が、ここまで多くの支持を得ているのは、一品物の機械や部品加工など個別受注型・多品種少量生産型に特化し、必要な機能を絞っているためだ。

競合製品は、できるだけ多くのユーザーに対応できるよう汎用的なつくりとなっている。

大企業から中小企業まで幅広い層で使えるようにすることが多く、中小企業で導入を検討する際には、カスタマイズが求められる場合が大半だ。

一方、「TECHSシリーズ」はユーザーを絞り込んでいるが故に、70～80%はノーカスタマイズで活用されているという特長もある。

実際、T社のユーザーのほとんどは、年商30億円以下の機械・装置メーカーや部品メーカーとなっている。

また、T社は100%自社開発の国内No.1・世界Only1の製品を擁し、下請けや派遣は一切行わないのも特徴だ。

その理由を現社長の山崎耕治氏（以下、Y氏）は、「創業者は、下請けや派遣では、エンジニアの就労環境を高めることは難しいと考えていました。価格競争に陥り、納期に間に合わせるために、過酷な超過勤務に繋がりやすいためです。そんな就労環境で、お客様のニーズに応える仕事ができるとは思えません。そこで、エンジニアが健全な環境で働くことができ、お客様のニーズにも応えられる事業の道として、“ニッチトップ戦略”を指向するようになったのです」と話す。

さらに、T社は単にシステムを導入して終わりではない。

T社には9名の中小企業診断士が在籍している。

社内でそのメンバーによるIT経営プロジェクトが立ち上がり、ユーザーの財務諸表を預かり、課題抽出からITツールの活用方法、PDCAを回す環境作りまでコンサルティングを行うサポート体制を構築した。

T社が目指すのは、ITツール導入で生産性向上を図り、その先にある収益改善までサポートすることだ。

Y氏は、「当社はいわば専門医。特定業態の顧客の原価が見えない、納期が遅れる、利益率が低いなどといった病状を診断し、『TECHSシリーズ』等を処方すると共に、回復期のリハビリを支援する。当社は、ソフトウェア会社同士の競争に明け暮れるのではなく、ITを活用して、お客様の企業体質を変える唯一無二の存在を目指す」と話す。

T社は、個別受注型・多品種少量生産型の製造業に特化したシステム導入と、その後の収益改善に至るまでの手厚いサポートを行うことで、お客様から高い評価・信頼を得てきた。

T社は、多品種少量生産型の中小製造業に対する、生産管理システムを通して経営改善に貢献する市場（池）のクジラとなっている。

　　
　　
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