2,000円以上する高級潤滑剤 -スズキ機工株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2024年5月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載117回目の今回は、千葉県松戸市で、オーダーメイド産業用自動機械・CCDカメラ検査装置の設計・製作、ハイブリッド式自動粉掛け装置HS-101の製造・販売、極圧潤滑剤LSベルハンマー・食品機械用潤滑剤H1ベルハンマーの製造・販売などを行うスズキ機工株式会社(以下、S社)の池クジラぶりを見ていきたい。

S社は、1971年、現社長の鈴木豊氏(以下、S氏)の父親の鈴木道弘氏が、千葉県松戸市で設立した。

専門業者もなく、どこにも売られていない一品もの産業自動機械の製作と自社ブランド潤滑剤の開発・販売という二本柱で事業展開し、成長発展している。

バブル崩壊とともに、価格破壊が進行し、体力のないお客様企業の多くが、必要な設備更新やメンテナンス対応をすることが難しくなり、その結果、生産性の悪化と不良品発生が高まる悪循環に陥り、倒産・廃業が数多く発生した。

当時、売上の95%以上を機械メンテナンスに依存していたS社も、この波に巻き込まれた。

そんな中、都内商社で営業職についていたS氏に、先代から戻ってきてほしいと打ち明けられた。

先代としては、今後の事業環境がますます厳しさを増すことは認識している中で、後継者を育成できる絶好のタイミングと判断した。

S氏は、何不自由なく自分を育ててもらえたことへの感謝の思いもあり、1997年、S氏が28歳の時、入社を決意した。

S氏は前職で世話になった食品会社の社長から仕事が舞い込んだことを機に、食品メーカー向けの自動機械や検査装置の設計・製作を手掛け、徐々に業態転換を果たしていく。

ただ、食品メーカー向けの機械は一品物の機械ばかりのため、そのメンテナンスに手間暇がかかるなどから利幅の薄い自転車操業の状態が続いた。

そこで、S氏は1つの決断をする。

それが、顧客規模や業種を選定基準にせず、片道1時間以上かかるお客様の仕事は受けないということだった。

その結果、S社の取引先数は半減し売り上げが減少した。

しかし、エリア・取引先を絞り込んだことで、1社あたりのお客様にかける時間が増えた。

訪問頻度が増えたことで、お客様とこれまでできなかった話ができるようになった。

そこで集まったお客様のお悩みに耳を傾け、解決していくことで、中長期的に、売上・利益は大幅に改善していった。

そして、お客様の声を聞くことでS社の新規事業も生まれた。
それが奇跡の潤滑油と呼ばれる「ベルハンマー」だ。

ベルハンマーには、これまでの潤滑油では解決できなかった、お客様の不の解消につながる数々の工夫が施されている。

お客様の声をベースに開発したベルハンマーは、金属の深層部にまで浸透する。

これにより、金属の表面に滑らかな面と潤滑性を持った皮膜を形成することで摩擦抵抗を減らし、その潤滑性も長く持続するようになった。

こうしてベルハンマーは潤滑剤の提供価値を高め、1本2,000円以上する高級潤滑剤という新市場を切り開いた。

もともと機械メンテナンス用に開発したベルハンマーは、その後、個人ユーザーからも熱烈な支持を得て、ミニサイズもつくられるなど、一般消費者というユーザー獲得にもつながるなど、期待以上の成果を得ることができた。

S社は、お客様の声に徹底的に耳を傾け、その悩みを解決する自社ブランド商品を次々と開発して行き、お客様から高い評価・信頼を得た。

S社は、お客様の抱える悩みを解決するこれまでになかった驚異的な極圧潤滑性能を有する高級潤滑剤市場(池)のクジラとなった。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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