中小企業にパワハラ防止法適用~学び直しに“言葉を磨くトレーニング”を!

経営

先日、カンヌ映画祭で韓国人俳優が最優秀男優賞を受賞した映画「ベイビー・ブローカー」。監督は、「万引き家族」で有名な是枝裕和監督です。

インタビュー記事によると、撮影は韓国で8ヶ月に及んだものの、日本にいるよりも身体が楽だったとありました。日本と比べて働き方(労働時間管理)が徹底されていたからだそうです。

また、かつて様々な事件があったことをきっかけに、パワハラ、セクハラがないよう教育も行われているとのことでした。撮影入り前には「リスペクトトレーニング」を受け、パワハラ、セクハラ行為をすると仕事を干される、という徹底ぶりだと書かれていたのが印象的でした。

2022年4月1日 中小企業にパワハラ防止法施行

2022年4月1日、中小企業にパワハラ防止法が施行されました。
大企業は、2020年6月1日、一足先に施行されています。
これで全ての企業にこの法律が適用されたことになります。

その背景には何があるのでしょうか。

厚生労働省の調査によると、「個別労働紛争解決制度の施行状況」では、2020年までの過去9年間連続で、「いじめ、嫌がらせ」に関する相談件数が、過去最多を更新し続けています。2021年は若干の減少がみられたものの、相変わらず高止まり状態です。

それを解決するためのパワハラ防止法は、その定義を3項目に定めています

(1) 優越的な関係を背景とした言動
(2) 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
(3) 労働者の就業環境が害されるもの

具体的なパワーハラスメントの内容とは?

更にパワーハラスメントを具体的な6つの種類にカテゴライズしています

パワーハラスメント① 身体的な攻撃:暴行・傷害

・殴打、足蹴りを行う。
・相手に物を投げつける。

パワーハラスメント② 精神的な攻撃

脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
・人格を否定するような言動を行う(相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む)。
・業務の遂行に必要な以上に 長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う。

パワーハラスメント③ 人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視
・1人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる。

パワーハラスメント④ 過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する。

パワーハラスメント⑤ 過小な要求

業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる。
・気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない。

パワーハラスメント⑥ 個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること
・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する。

企業として実行すべきこと

第一に企業として実行すべきことは、法律に則り環境整備をすることです。就業規則の改定、ガイドラインの制定、相談窓口の設置、発生後の対応フローの明確化等です。

次に、全社員に対して、ハラスメント教育を実施します。ハラスメントは、上司から部下に対してだけでなく、同僚間、部下から上司に対しても発生しうるものだからです。

また、取引先の社員、採用活動で応募してくる学生に対する行為に対してもパワハラ防止法が適用されることを想定しておかなくてはなりません。

従って、全社員に向けて、教育あるいは、社内告知の徹底を行うことが大切です。

パワハラ防止教育の中に「言葉を磨くトレーニング」を

ようやくコロナも落ち着いてきました。マスクに対する規制も今後緩んでくることでしょう。
私たちは日ごろ、言語と非言語(表情やしぐさ)を駆使してコミュニケーションをとっています。

特に非言語は大変重要な要素にも関わらず、それがマスクによって長らく遮断されました。
その上、在宅勤務ともなると、画面越し、マスク越し、「通信が重くなるのでカメラオフでお願いします」ということもしばしば。こうなると、言語だけが頼りです。

コロナウイルスは図らずも、日頃の言葉の選び方、ものの言い方に対するマナーや配慮の有無を浮かび上がらせました。

「これは指導なのかパワハラなのか」と、その境界線に線引きするだけでは問題解決にはなりません。例えパワハラにはあたらなくても、相手が不愉快な思いをすれば、やる気が削がれるからです。

特に組織や人の上に立つ立場の社員には、パワハラ防止教育の中に、「言葉を磨くトレーニング」も入れて頂きたいと思います。

先ほどの是枝監督が現地スタッフに言われたことは、「ちゃんと食べて、ちゃんと寝ていれば、怒鳴らずに済む」とか。

パワハラ防止を徹底する取組みの根本に、「働き方改革」があることは言うまでもありません。

関連情報ご案内

私共は、グループ企業に日本話し方センターを擁し、“話し方”をトレーニングする講座をラインアップしています。以下のサイトをご覧ください。
日本話し方センターHP

また、私共では、ハラスメント防止法に則った社内の環境整備のご支援を行っています。さらに、企業単位の「ハラスメント研修」のプログラムをお客様の実態に応じてカスタマイズし講師派遣しています。お気軽にご相談ください

今後開催する関連セミナー

以下に、今後の関連セミナーもご案内します。

新任管理職必見!メンタルヘルス・ハラスメント基礎知識
2024/04/19(金) 13:00~16:30

実戦マネージャー短期養成コース第1講<判断して実行する力>
2024/04/24(水) 9:30~16:30

実戦マネージャー短期養成コース第2講<部下と対話する力>
2024/05/09(木) 9:30~16:30

実戦マネージャー短期養成コース第3講<自責で行動する力>
2024/05/23(木) 9:30~16:30
 

筆者紹介

アタックスグループ パートナー
株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 代表取締役
中小企業診断士 北村 信貴子
1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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