昨今の経営環境は企業にとってネガティブな情報ばかりです。円高やエネルギー関連コストの上昇はもう聞き飽きるくらい、毎日、新聞の紙面を賑わせています。私が仕事を行っている愛知県は、車関係に携わる事業者の方が多く、トヨタの生産調整にも不安は尽きないでしょう。
しかし、いくら不安であっても経営環境が悪くても、会社はその中で自社の強みを生かし生き抜いていくしかない、というのが経営者皆様の強い決意だと思っています。
さて、そのような厳しい環境下で「物事を決めるための思考プロセス」についてお話したいと思います。
意思決定における思考プロセスの重要性
大げさな話ではなく、誰もが毎日ある出来事に対して、このように対処しようとか、役員会に提案する内容を考えるとか、顧客からの要望にどう応えるか等、常に仕事において、物事を自分自身のプロセスで考え、決めていっていると思います。
しかし、そのプロセスがきちんとしていないと、決断するための判断が曖昧になったり、時間がかかったりします。判断のミスにもつながりかねない事態が起こりうる重要なプロセスなのです。
その決定における思考プロセスについて考えてみます。
これは役員会の場でのやり取りです。
■社長「この金額(1,000万円)は正しいのか?」
●担当者「はい、いつもお願いしているA建設にお願いしたので正しいです。」
■社長(溜息)
▼片岡「社長が “正しいのか?” とお尋ねされたのは、貴殿が担当者としてこの見積もりの内容が正しいかを確認したうえで “妥当な見積りである” と判断され、この場に稟議を出されたのか?と尋ねられたのだと思いますよ。」
●担当者「はい、私は専門家ではないので建築資材等の単価が正しいかどうかはわかりません。ですから、信頼のおけるA建設に依頼して見積もりを出してもらいました。」
▼片岡「おっしゃる通り専門家ではないことはわかります。しかし、この見積書が役員の皆様に正しいかどうかを判断いただくときはあい見積りを取って出されればよろしいかと。」
●担当者「永年取引のあるA建設に対してそんな失礼なことはできません。」
■社長「わかった、あとは俺がやる。」
いかがでしょうか?
判断や決断へのプロセスで大切な「仮説思考」
皆さまも仕事だけでなく生活していくうえでも物事を考え決めるという行為は常に繰り返し行っておられると思います。
その中で、特に仕事のケースでは決定した選択によってもっと効果が高い結果が得られたとか、収益に貢献する結果になったかもしれない等、正しい選択ができなかったことで会社の業績にマイナスになる可能性が出てくるのです。
私が物事を判断したり決断したりするプロセスで大切にしているのは「仮説」と「論点」です。
論理的思考といった大げさなことではなく、この2点は常に頭においてものを考える様にしています。
仮説の意味をここで述べても仕方ないので、上記のケースで説明します。
私が担当者であればこのように考え、稟議をあげるでしょう。
②役員会で社長が納得するためには修理の内容と金額の客観的な資料が必要だ。
③材料の単価や工賃の市場価格を調べている時間はないし、役員会でそんな細かな資料は見てもらえないだろう。
④工事を発注するのは恐らくA工務店だが、金額に客観性を持たせるにはどうするか?
⑤もう一社、あい見積を取っておけば客観性は担保できる。
いかがでしょうか?
「論点」については、別の機会に改めて解説したいと思います。
ぜひ、皆さまの会社でも、社員の皆様に「仮説思考」について書かれた書籍を読んで頂くことをお勧めします。正しい決断をおこなうために。
(推薦図書)
『仮説思考』内田和成著
筆者紹介
- 株式会社アタックス戦略会計社 代表取締役会長 片岡 正輝
- 1952年生まれ。アタックス税理士法人の前身である公認会計士今井冨夫事務所に入社。現在は、アタックスグループの統括マネージャーとして、広範囲な知識と豊かな経験という両輪を武器に、経営・財務・会計業務を中心に計画経営の推進、経営再構築、事業承継等のコンサルティング業務に従事、経営者の参謀役として絶大なる信頼を得ている。
- 片岡正輝の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。